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4.火花散る(11)
「そっか……。悪かったな」
柊翔が申し訳なさそうな顔で、俺を見る。別に柊翔が悪いわけじゃないのに。
「鴻上さん、今、付き合ってる人とかいるんですか?」
和人が、真っ直ぐな目で聞いてきた。
「……いるよ」
それに応えるように、柊翔も強い目で答えた。
その表情を見て、俺は嬉しくなって、俯いてしまう。本当なら、大きな声で、『俺たち、付き合ってるんだ』って、言ってしまいたい。でも、そんなことはできないのが現実で。
そう思ったら、なんだかやるせなくなる。
はぁ、とため息をついて、ふと顔を上げると、太山さんが、優しく微笑んでいた。まるで『大丈夫だよ』と言ってくれてるかのように。
「そっかぁ、よかったな、雅春」
安心した顔で、雅春の背中を思い切りたたくと、雅春もほっとしたような顔。
「なに、君、澤登のこと好きなの?」
今度は柊翔のほうが興味津々。
「好きっす!」
顔を真っ赤にしながらも、目の前の柊翔に言い切った。
……すげぇ。雅春、カッコイイ。
俺も……お前みたいに言いきれたらいいのに。ふと柊翔のことを見ていると、柊翔と目があった。ニコリと微笑んで見せたけれど、ちょっと不自然になってしまったかな。すると、俺の肩に手を伸ばして抱き寄せた。
へ?
「そっか。頑張れよっ」
あ?
なんで?
こ、この状況は?
「し、柊翔さん、暑いですっ!」
本当は嬉しいけど、雅春と和人の手前、ワタワタと逃れようとしたのに、「逃げるなぁっ!」と、思い切り、ヘッドロックしてきた。
「く、苦しいっ!」
腕を軽く、パンパンと叩くと、
「お前が、寂しそうな顔するから」
なんて、耳元で囁く。
な、なにしてんですかっ!
「要、すんごい気に入られてんのな」
雅春と和人が、びっくりしたような顔で、俺を見る。
「え、あ、う、うん?」
どうしよう。柊翔が、変な目で見られちゃう?
そんな思いが頭をよぎった瞬間。
「ふふん。……俺、要のこと愛してるから」
そうやって、ニヤリと笑う。
え、え、ええぇぇぇぇぇっ!
俺は顔が真っ赤になってしまって、なんとか柊翔の腕から逃れようとしてるのに、全然、逃がしてくれない。思わず、近くにいる太山さんに助けを求めようとしたのに、その太山さんですら、ニヤニヤしてみてるだけだし。
そんな笑ってる場合じゃないでしょうっ?
「すげぇぇぇぇっ!」
……えっ?
目の前の二人が、顔を真っ赤にしながら、興奮してる。
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