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4.火花散る(13)

「俺はかまわないよ?」  ……は?  ニコニコしながら、雅春たちに言う柊翔は、なぜだか嬉しそうで。俺が、こんなに心配してるのに、なんで、そこでそういうこと言うかな。三人が楽しそうに、作戦を練っているところ、俺だけ一人、呆然と見ていた。 「……大丈夫だって」  太山さんが、俺の肩に手を置いた。 「た、太山さん……でも」 「お前の友達だって、信じてないんだ。彼女も信じないだろ。そうやって、断ろうとしてるって思うんじゃないか?」 「……そうでしょうか。」  俺は、そんな簡単な話じゃないと思うけど。 「それに、柊翔も覚悟決めてんじゃないの?」 「覚悟って……」 「いつかカミングアウトするときが来るかもしれないじゃん」  ドキッとした。  俺は……俺は、そんなこと考えたこともなかったから。  俺はただ、柊翔と一緒の時間を過ごせればいいと、単純に思ってた。  だけど、このままずっと、と思ったら、いつかは親とかに言わなくちゃいけない時がくるかもしれない。でも、このまま、ずっと、なんて、ないかもしれないじゃないか。 「要、どうした?」  三人で楽し気に話していたのに、無言でいる俺に気が付いて、柊翔が声をかけてきた。 「あ、ううん、なんでもないよ」  そう言って、無理に笑う俺に、たぶん柊翔は気付いている。それでもあえて、何も言わずに、笑顔をくれる。  ごめんな。柊翔。  俺って、ヘタレだな。  フッとため息をついた時。 「それでは!『澤登先輩に諦めてもらいましょう』作戦、実行!」  意気揚々とスマホを掲げた雅春は、LIMEのメッセージの送信ボタンを押した。 「はぁっ!?」  俺が悶々としている間に、三人の間では話がついていたらしく、雅春は澤登さんに、『神社で鴻上さんと遭遇しました』とメッセージを送ったらしい。 「早っ」  メッセージに既読マークがついたのか、雅春が嬉々としてLIMEの画面を見ている。  そして。 「……『グッジョブ』だって」  なんとも微妙な顔の雅春に、まぁ、まぁ、と肩に手をやる和人。 「じゃあ、俺たちも大っぴらにイチャイチャしようか?」  そう言うと、柊翔が肩に手を回したかと思ったら、ガッチリ抱き寄せられた。 「し、柊翔さんっ!?」 「いいじゃん。」  ニヤッと笑う柊翔に、強く言えない俺は……惚れた弱みなんだろうか……? 「ま、雅春くんっ!ど、どこっ?」  神社の入口近くに移動してた俺たちの前に、少し息をきらせた、澤登さんが現れた。

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