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4.火花散る(17)
* * *
「そ、そうなんですか……」
柊翔の話を聞いて、赤くなってしまう俺。
「うん……その後、澤登のほうは、何事もなかったように彼氏と続いてたみたいだったけど……高校行ってから別れたのかもな」
それで、心残りのある柊翔にちょっかいをだしてきたのか。
俺の知らない柊翔を垣間見たようで、なんだか落ち着かない。
「そういえば、要にはいなかったのか?そういう彼女みたいな存在って」
「お、俺は、つ、付き合ったこととかないしっ」
もう恥ずかしすぎる。
「そっか、それじゃ、俺はそういう心配はしなくていいんだな」
そう言うと、ニヤリとする。
「し、柊翔には、他にはいないのかよ。お、俺が心配しなくちゃいけないような人……」
正直、知るのは怖いけど、知らないほうが……もっと怖い気がした。
「知りたい?」
ジッと見る柊翔の目が、少し怖いと感じたのは、たぶん、知りたいけど、知りたくないって思ってるせいだ。
「……いえ。いいです」
知ったところで、それは過去のこと。今更、俺に何ができるわけでもない。
「……い、今は、関係ないんですよね?」
俺が言えるのは、これだけだ。
「あたり前だろ」
そう言うと、俺の頭をグリグリっと撫でて、極上の笑顔をくれた。俺の余計な心配を払拭してくれるえその笑顔は、俺の弱い部分を支えてくれる。
「それに」
俺の手を握ったかと思ったら、手の甲に軽くキスをした。
「彼女とかいても、結局、お前以上に好きになれなかったから」
愛しそうに見つめる柊翔に、恥ずかしくなって顔に熱が集中してしまう。
「お、お願いだから、そ、その顔、やめてくださいっ」
どんだけ、周りを見えてないんだよっ。そんな顔しちゃって。
「仕方ないじゃん。好きな人が目の前にいるんだから」
サラッと言ってるけど、ここ、ファミレスだからっ!
他の人もいるんだからっ!そんな甘い顔で、見ないでくださいっ!
「も、もう、意地悪しないでくださいよっ」
思わず周囲をキョロキョロしながら、無理やり手を引っこ抜くと、残ってたわらび餅を口に運ぶ。
「残念。もうちょっと、触ってたかったのにな」
クスクス笑う柊翔に、完全に遊ばれてると、思い知らされる。だけど、それに反撃できるほど、俺には余裕なんかない。
「ほ、ほんと、意地悪だ。」
照れてる俺を、優しく見つめる柊翔に、悔しいけど……やっぱり好きだな、と心の中で呟いた。
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