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4.火花散る(22)
俺たちが会話しているところに、日高さんがやってきた。
「太山くん、こちらは?」
「あ、こいつ、従弟の柊翔」
「こんにちは」
「どうも~。太山くんには、お世話になりっぱなしで」
ニコニコと話す日高さん。
「日高さんって、もしかして、S女子出身の?」
目を大きくして、日高さんを見る柊翔に、俺の方は、なんのこと?という感じ。
「そう。柊翔くんは、今、大学生?」
「いえ、高3です」
「リアルタイムじゃないのに、よく知ってるね」
「そりゃ、知ってますよ。3年連続で全国いった人なんて、そうそういませんから」
「でも、女子のほうなんて……」
「それに、柾人さんからも聞いてましたから」
「あはは。そっち情報のほうか」
日高さんが、そんなにすごい人なのか、と、ちょっと驚いた。子どもたち相手にしているときは、そんなに感じなかったんだけどな。
「でも、日高さん、背が高いですね。俺と同じくらいありそう」
思わず並んで立ってしまうと、本当に目線が変わらない。
「もう。背が高すぎるの、コンプレックスなのに」
そう言いながら、頬を染めてる姿は、十分女の子らしい。
「でも、モデルさんみたいで、かっこいいですよ?」
「ウフフ。獅子倉くんてば、うまいこと言って」
「いや、マジですって」
俺の言葉に気を良くしたのか、ニコニコ顔の日高さん。
「きっとモテるんでしょうね」
「んー、女子にモテるから困ってるんだけど」
苦笑いしながら、そう言った。
「獅子倉くん、彼女とかいるの?」
急に、興味津々に聞いてきた。
「えっ」
思わず、顔が強張ってしまう。
「い、いえ、彼女は……いません」
なんとなく、椅子に座っている柊翔の視線が気になりだした。
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