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5.夏の終わり(5)
祭りの時よりも、人出が多いのは、ここの花火がちょっと有名なせいもあって、わざわざ近隣の県からも見に来る人が多いから。柊翔の家から花火の見える河川敷に向かうまで、時間貸しの駐車場には他県ナンバーの車の多いこと。
「早めに出たつもりだったけど、もう混んでるなぁ」
車だけでなく、歩行者も多くて、なかなか河川敷までたどり着けない。
「仕方ないな……別のとこから見るか」
ボソッと柊翔はつぶやくと、俺の手をとって、脇道にそれた。
「ど、どこ行くんですか?」
「小学校」
「え?」
予想外の場所を言われて、戸惑う俺。
俺たちの通ってた小学校は高台の上にあった。でも、そのせいもあって、回りは木々に覆われている。確かに、高い空に打ち上げられる花火だから、小学校の校庭からなら見られるかもしれないけど。
久しぶりにのぼる坂道は、下駄でのぼるのは思いのほかしんどい。柊翔は息もきらせずにのぼっていくけど、運動不足の俺はついていくのも精一杯。
「要、お前、もうちょっと運動したほうがいいんじゃないか?」
そう言いながら、笑う柊翔は、街灯の灯りの中でも輝いて見える。
「そう……ですね……はぁ」
のぼりきったところで見えてきた懐かしい校舎。
「あ、れ……?こんなに小さかったですっけ?」
点々とつく街灯の中に、黒く浮かぶ校舎。
「お前がでかくなったって証拠だろ」
隣に立った柊翔が、俺の手を握ると、今では広く感じない校庭のほうへ足を進めた。そこには、俺たち同様、穴場と思われる小学校に来た人たちが、レジャーシートを広げて、ちらほら座り込んでいた。
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