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第二章・5

 吐き終えた露希は、今度は寒いと言い出した。  かちかちと歯を鳴らし、震えている。 「仕方が無いな」  誠は自分のジャケットを脱いで彼に羽織らせ、車に乗せた。  彼の横に寄り添い、しばらく体をさすってやった。  若頭からの預かりものだ。  とにかく、体を壊したりさせれば大ごとだ。  次第に露希の震えは治まり、紫色だった唇に赤味が戻ってきた。 「……お腹すいた」 「今度は、飯か」  ずいぶん要求の多い玩具だな、と誠はクスリと笑った。 「何か、食べたいものはあるか?」 「……おかゆ」  確かに、この体調では粥くらいしか喉を通らないだろう。  誠は運転席に戻ると、車を走らせ始めた。

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