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第二章・6
こんな時刻では、まともな飲食店は開いていない。
誠は馴染みのバーへ露希を連れて行くと、マスターに注文してみた。
「おかゆ、出せる? この子が欲しがってるんだけど」
「神崎さんにしては、ずいぶんみすぼらしい子を連れてきましたね」
「上からの預かりものなんだ。大切な子だよ」
それはそれは、と肩をすくめ、マスターは滋養たっぷりのアサリと卵の入った粥を作ってくれた。
「さ、おかゆだ。食べるといい」
だされた粥を、露希は猛然と口にした。
「あ、熱ッ! あッつ! ふぅ、ふぅ、熱ぅッ!」
「そんなに慌てて食べなくても。おかゆは逃げて行かないよ」
おかわりまでして、露希はようやく人心地ついた。
すると、途端に眠たくなってきた。
「神崎さん、この子寝てますよ?」
マスターの指摘に気が付くと、露希はカウンターに突っ伏して寝入っている。
手には、レンゲを持ったまま。
「世話の焼ける子だなぁ」
誠は露希を背負うと、マスターに礼を言って店を出た。
すでに、日付は変わっていた。
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