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第三章・4
露希には、すぐにピンときた。
昨夜、ずっと傍に居て優しくしてくれてたのは、この人だ。
吐いてる僕の背中を、ずっとさすってくれた。
寒い体に、上着をかけてくれた。
ペコペコのお腹に、おかゆをご馳走してくれた。
汚れた体を、お風呂できれいにしてくれた。
(あれ……。何か、涙が……)
両親に虐待されて育った、僕。
施設では、年上の入所者に犯されてた、僕。
高校でも、Ωというだけでいじめられてた、僕。
そんな僕に、この人は。
(人に、こんなに優しくしてもらったのなんて、初めて)
ぽろりと一粒こぼれると、とめどなく涙があふれてきた。
「う、うぅ、っく。んぅ、うぅ、ううう……」
そんな露希の肩に手を置いて、誠はそっと椅子に掛けさせた。
「まずは、食べよう。泣くのは、それからでも遅くない」
さぁ、と示されたテーブルの上には、美味しそうな料理が並んでいた。
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