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第三章・7
露希の心配は杞憂だった。
何でも好きな服を買っていい、と言われたので、シンプルなシャツやジーンズを選んだ。
ただ、その店は高級ブティック。
Tシャツだけで3万円もする店だ。
後で値段を知って、露希は再び震え上がった。
だが誠は平気な顔で、カードを出して支払っている。
「こんなに高級な店じゃなくって、もっと安い所に行こうよ。僕、いい店知ってるよ?」
「いずれ親父さんの傍に居ることになる人間に、安物を買い与えるわけにはいかないよ」
靴に時計、ベルトにアクセサリー。
露希は、まるで誠の着せ替え人形のように身なりを整えさせられた。
ヘアサロンへ行ってカットをし、エステへ行って肌を磨き上げた。
「ほぅら、見違えた」
大きな姿見に映った露希は、今までで一番輝いて見えた。
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