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第四章・3

「今日は、どうするの?」 「私はちょっと事務所へ行かなければ。露希は、留守番しててくれるかな」 「お昼は?」 「デリバリーで、好きなものを取っていいよ」  誠は、昨日買った露希の財布にざっくり紙幣を入れた。 「こんなにたくさん……」 「退屈だったら、外へ遊びに行ってもいい。ただし、門限は9時だ。守ってくれ」 「僕、逃げちゃうかもよ?」 「そしたら、私が指を落とすだけさ」  いとも平然と言ってのける、誠だ。 「露希を薬漬けにして、逃げられないようにする方法もあるけど」  露希は、ぞっとした。 「や。イヤだ。遠慮する」 「そりゃ、そうだろう」  笑いながら靴を履き、誠は出て行ってしまった。  優しそうに見えて、やはりヤクザには変わりない誠の怖さを、露希は悲しく噛みしめた。

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