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第六章・4

 しかし露希の熱は、一向に下がらなかった。  こんこんと眠り、時々起きて水を飲む。  食欲があるのは良いことだった。  だが、食べると再び眠る日々。 「よほど疲れてたんだな」  在宅でできる仕事を寝室に持ち込み、誠は露希を見守った。  露希は、時々ひどくうなされた。  怖い。痛い。辛い。  両親の暴力、入所者からの性的虐待、同級生からのいじめ。  それから、家出してからの荒んだ生活。  あらゆる負の過去が、夢に現れては露希を苦しめた。 「う、あぁ。痛いよ。怖いよぅ……!」 「大丈夫。ここに戻って来るんだ」  そんな彼の手を取り、誠は額の汗を拭ってやった。  体を蒸しタオルで拭いて、パジャマを着替えさせてやった。 「ごめんね、誠さん」 「いいんだ。辛い思いをしたんだな」  ようやく、ぽつりぽつりと露希は過去を誠に語って聞かせるようになった。

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