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第六章・8

 どこにも居場所のない露希は、ある日全てから逃げ出した。  学校を早退し、誰もいない自宅からわずかな金を持ち出して電車に乗った。  遠くへ。  どこか、遠くへ。  ここではない、どこか、遠くへ。  誰も自分を知らない街へ、逃げ出した。 「お金が無くなってからは、援交やって稼いだよ。初めのうちはうまく行ってたんだけど……」  やがて栄養不良から、Ωとしての特性であるフェロモンが出なくなった。  やつれて枯れ果てた露希を買おうという男はいなくなり、とうとう食べるものも変えなくなってしまった。 「そこを、あの『反田さん』っていう人に、拾われたんだ」 「反田は、いわば命の恩人か」

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