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第六章・10

 露希を、可哀想に、と思うのは簡単だ。  だが、そう言う資格が私にあるのだろうか。  そんな境遇の少年少女は、これまでいくらでも見てきた。  そして彼らは、中嶋組のために底辺で稼いでいるのだ。 (露希が知ったら、私を軽蔑するだろうな)  誠は、ただ彼の手を握り、優しく撫でることしかできなかった。 「誠さん、ごめんね。暗い話ばっかりして」 「いや、謝るのは私の方だ」  露希の事情も知らないで、無茶な要求ばかりしてきたね。  そう言って、誠は露希にキスをした。  静かな、温かいキス。  テクニックなど使わない、心を込めた穏やかなキス。 「ん……、ま、こと、さん……」  熱で火照った露希の手を取り、寄り添うようにキスをした。

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