56 / 100
第七章 忘れられない遊園地
「ね! 誠さん、ジェットコースター乗ろう! ジェットコースター!」
「待て! いきなりそれは、ないだろう!」
露希の発熱は一週間ほど続いたが、それが引くと途端に元気になった。
念願の遊園地に誠と一緒にやって来て、遊ぶ気満々なのだ。
「一時間待ち、かぁ。人気のアトラクションなんだね」
「待ってなさい。何か買ってきてやる」
戻ってきた誠の手には、コーンに乗ったアイスクリームがあった。
「アイスだぁ♡」
「大げさだな」
「ううん。何年ぶりだろ、食べるの」
嬉しそうに冷たいアイスを舐める露希は、どこにでもいる普通の少年に見える。
だがその奥底には、いっぱいに溜まった涙の海があることを誠は知らされた。
「美味いか?」
「うん!」
上納金を収めるまで、あと一ヶ月切っている。
そして露希は、連れて行かれる。
誠の胸は、締め付けられた。
ともだちにシェアしよう!