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第七章・5
「誠さんは、子どもの頃に遊園地へ来たことあるの?」
「無いよ。私も、今日が初めてだ」
嘘、と露希は眼を円くした。
「誠さんはいいとこのご子息様で、可愛がられて育ったんだと思ってた」
「まさか。だったら、こんな稼業に染まってやしないよ」
「あ……」
そうだった。
誠さんは、ヤクザだったんだ。
それをすっかり忘れていた、露希だった。
優しくて、あったかくて、笑顔の素敵な誠さん。
そんな誠さんが、怖いヤクザだなんて。
「で、でも。お風呂で見たけど、誠さんはタトゥーを入れてないよね」
「うん。なぜか外山さんに、止められててね」
外山さんと言えば、あの怖いペニスのお兄さんだ。
誠さんの、上司に当たる人だ。
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