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第八章・8

「今夜は、私はソファで寝るから。露希はこのままベッドで寝なさい」 「いやだ。いかないで、誠さん」  露希のフェロモンが、さらに濃厚に立ち込めた。  むせるような、甘い感覚が誠の身体に絡みつく。 「ダメ、だ」 「誠さ……」  伸ばした露希の腕が、するりと誠をつかみ損ねた。  ドアの向こうに行ってしまう誠に、悲痛な声が響く。 「誠さん、イヤだよ! 僕を抱いて、ねぇ!」 「すまない、露希」  行っちゃった。  誠さん、僕を置いて、行っちゃった。 「ヤだよぅ。僕、組長さんへのプレゼントになんか、なりたくないよぅ……」  涙が、次々にあふれてくる。  べそをかき、枕を噛んで独り寝の夜を過ごした。

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