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第九章 愛してるよ

 涙で目が真っ赤になった露希を、不眠で瞼が腫れぼったい誠は、病院へ連れて行った。  診断は、やはりΩ特有のフェロモンが漏れ出ている、とのことだった。 「君のフェロモンは通常より濃厚なようだから、一番強い薬を処方しておこうね」  しばらく副作用で眠気が来るかもしれないけれど、そのうち慣れるから安心しなさい、との医師の言葉を、二人で神妙に聞いていた。  病院でさっそく薬を飲み、症状が安定したところで誠は露希を車に乗せた。 「お薬、毎日ちゃんと飲むんだぞ」 「うん……」 「どうした?」 「ね、何で昨夜抱いてくれなかったの?」  口をとがらせる露希の癖は、もうすっかりおなじみの仕草になっていた。  誠は、そこまで彼を深く知るようになっていた。 「フェロモンで錯乱した私に、抱かれたかったのか?」 「そうじゃないけど」 「錯乱して、君を乱暴に扱いたくはなかった」 「ホント?」 「ああ」  半分は、本当だ。  後の半分は、ヤクザ特有の『義理』のためだ。  だが、それでもこの答えは露希を満足させたようだった。

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