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第九章・2

「じゃあ、今夜はちゃんと抱いてくれる?」 「いいよ」  ぅふふん、と鼻を鳴らす露希が可愛い。 「せっかくだから、ドライブしようか。行きたいところは?」 「海を見たいな」  誠は直進をやめて左折をし、海へ向かった。  賑やかな海水浴場を通り過ぎ、人気のない場所へ。  護岸もろくにされていない外れの海岸線の路肩へ、車を止めた。 「さ、海だぞ」 「誠さん、すごいね」 「なぜ?」 「よく解ったなぁ、って。僕、こういう静かな海が見たかったんだ」  波の音、風の声、きらめく日差しの圧。  それらを全身に浴びて、露希は気持ちよさそうに伸びをした。

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