76 / 100
第九章・2
「じゃあ、今夜はちゃんと抱いてくれる?」
「いいよ」
ぅふふん、と鼻を鳴らす露希が可愛い。
「せっかくだから、ドライブしようか。行きたいところは?」
「海を見たいな」
誠は直進をやめて左折をし、海へ向かった。
賑やかな海水浴場を通り過ぎ、人気のない場所へ。
護岸もろくにされていない外れの海岸線の路肩へ、車を止めた。
「さ、海だぞ」
「誠さん、すごいね」
「なぜ?」
「よく解ったなぁ、って。僕、こういう静かな海が見たかったんだ」
波の音、風の声、きらめく日差しの圧。
それらを全身に浴びて、露希は気持ちよさそうに伸びをした。
ともだちにシェアしよう!