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第九章・5

 あまり面白くないぞ、と前置きをして、誠は語り始めた。  不仲な両親のもとに生まれたこと。  結局両親は離婚し、父親に引き取られたこと。  父は再婚し、新しい母親との間に子が生まれたこと。 「私の父も義母も、弟ばかり可愛がってね。私は何とか二人に認めて欲しかった。がむしゃらに勉強し、優秀な成績を修めるようになった」 「すごいじゃん」  だが父はそれをいいことに、誠を全寮制の有名進学校へ放り込んだ。  我が家から誠の存在を消すための、口実だった。 「それでも私は、必死で勉強したよ。いつか父に、よくやった、と言ってもらえるように」  難関大学に現役で合格し、一流企業に就職した。  しかし、誠と父親との間の溝は、決して埋まらなかった。

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