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「遊園地?」  現在は大幅なリニューアル工事中の赤レンガ倉庫のほうに戻って歩きながら、この先にあるものを考える。船からも見えた観覧車が目の前に大きく見えてきていた。  デートによさそうな場所というなら、と思って言ってみたがちがったようだ。 「祐樹が行きたいなら、今から行ってもいいよ。閉園までまだあるし、すこしは遊べるだろ。行きたい?」  腕時計を確かめると7時半になるところだ。 「んー、きょうはいいかな。閉園時間までよく知ってるね」  誰かと来たことでもあるんだろうかと一瞬思ったが、孝弘はあっさりしたものだった。 「お客さんのアテンドで来たことあったから。行きたいのはもう少し先」  そういって連れて行かれたのは、昼間買い物をした超高層ビルの70階にあるバーだった。 「せっかくだから、すこし飲もう」  土曜の夜だったが、バーで飲むにはまだ早い時間のせいかフロアは空いていた。  先ほど地上から見ていた夜景もきれいだと思っていたが、70階から眼下に見える夜景はまた違った美しさだった。  こんないかにもなデートがとても楽しくてうれしくてドキドキする。  窓際のソファ席に案内されて、祐樹はギムレット、孝弘はミントジュレップをオーダーする。 「ミントジュレップなんて意外だな」 「ちょっと前に三里屯(サンリトン)のバーで飲んで、おいしかったから」  三里屯は北京の大使館街で、大使館員向けのおしゃれなバーやちょっとした洋食レストランが多い地区だ。 「三里屯か、懐かしいな。一緒に飲みに行ったことあったよね」 「覚えてた?」 「忘れるわけないよ。孝弘と行った場所は、ぜんぶ覚えてる」  祐樹はやわらかな笑みで、孝弘を流し見た。 「おれから誘ったでしょ。行ってみたいなって言って、孝弘に連れてってもらった」 「そうだったな」  五年前の風景が懐かしく思い出された。

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