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第4章 脳内妄想デート

「高橋さん、この前、三里屯行ってみたいって言ってただろ。週末、飲みに行かない? ぞぞむも一緒に」  アルバイト帰り、孝弘がめずらしく酒を飲みに祐樹を誘ってきた。  三里屯は昼間はしずかな大使館街だが、夜になると各国の大使館員向けにバーやステージ付きのライブハウスやこじゃれた洋食レストランが開店する夜遊びスポットになる。  先週、一緒に夕食を食べたときにそんな話を振っておいたが、孝弘は覚えていてくれたらしい。律儀に誘ってくれるまじめさがかわいいと思う。 「週末の三里屯? いいね」 「三里屯のバーは、高橋さんが行くようなホテルのバーとは全然ふんいき違うけど、おもしろい酒がいろいろ飲めるよ」 「そうなんだ」 「で、今週末、そこのステージで友達がちょっとライブするから見に来てって誘われたから、高橋さんもどうかな?」 「ライブ? 楽しそうだね」  夜7時に祐樹のマンション前で待ち合わせた。  孝弘は心配性なのかまめなのか、夜に出かけるときはたいてい祐樹を送り迎えしてくれる。それがデートみたいだと思っているのは、もちろん内緒だ。  単純に中国語があまり話せない祐樹を気遣ってくれているだけなのは理解している。  孝弘の友達はフィリピン人のバンドメンバー4人で、陽気で明るい歌声の女性1人と男性3人のバンドだった。  店のいちばん奥に造られた小さなステージで、洋楽の最新ヒットチャートを3曲演奏したあと、スタンダードナンバーをメドレーで歌って、けっこうな盛り上がりを見せた。  このバンドは普段は崇文区の三つ星ホテルのバーで演奏しているらしい。そのホテルの部屋に住み込みの専属契約しているというのだから、なかなかの好条件と言える。  孝弘とはぞぞむと一緒に飲みに行って話をするうち親しくなって、彼らの部屋に遊びに行く仲になったという。  そういう遊び方をして友達になるというのがちょっと意外な気がして、祐樹は孝弘の新たな一面を見た思いでジンバックに口をつけた。  ビール好きの孝弘もきょうはソルティドックを頼んでいる。

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