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第5章 たらしの才能
窓際に座って地上の観覧車を眼下に眺めながら、孝弘ってたらしの才能あるよなと考えた。こうやってスマートに部屋に連れこまれて、それがちっとも嫌じゃない。
ていうか、これって初めてのお泊りデート?
お泊りというなら北京で祐樹の部屋に何度も泊めたし、成り行きで天津でもツインルームに泊まったことはある。
でもこんなまともなデートとして一緒に泊まるのは初めてだ。何だろう、ふわふわするようなわくわく感にこそばゆくなってくる。
「おまたせ」
孝弘が部屋に戻ってきた。
ショッピングフロアのコインロッカーから買い物した荷物を取ってきたかと思うと、さっさとパッケージを開けて、ベッドのうえにシャツや下着を広げた。
「ごめんな、祐樹が水通ししたほうが好きだって知ってるけど、このままでもいい?」
「平気だよ、日本製でしょ。水通しは絶対ってわけじゃないし。これ、おれの分も買ってくれてたの?」
昼間見ていたオレンジ色のシャツが出てきて、祐樹はくすぐったい気持ちになった。
「祐樹に似合ってたから。あしたの着替えにいいと思って」
「うん、ありがとう」
あのときは照れてしまったが、こうして渡されると素直にうれしいと思えた。
ハンガーにかけてクローゼットに入れておく。
隣でジャケットをかけていた孝弘が、肩を抱いて祐樹を引き寄せた。
正面から顔を覗きこむ。いたずらを仕掛けた子供のような表情。
「祐樹、約束覚えてるよな」
「ん、なんだっけ?」
とぼけてみたが、孝弘の腕のなかでは自然と笑みがこぼれてしまう。
「ほら、一緒にお風呂入るよ」
その場でぱっぱと服を脱がされ、ガラス張りのシャワーブースに連れこまれた。
あんまり手際がよくて抵抗する気も起きない。
ガラス扉の向こうに、浴室と洗面台が見える。
「ほんとに広いね」
「な、狭くなかったろ」
あたたかいお湯に心もほぐれる。
シャワーを浴びていると、孝弘の腕が腰に抱きついてきた。くすりと笑うと、ちゅっと音をたててキスをされた。
「洗いっこしよ」
ボディソープで泡だらけになりながら、じゃれあって体に触りあった。孝弘の背骨を確かめるように祐樹が背中に腕を回した。口づけあって、手のひらで互いの体を存分に味わう。
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