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それを思うとうれしくて、胸がコトコト弾んだ。
小さな小人がそこにいて、とんとんと祐樹の気持ちを弾ませるような感じと思って、くすりと笑いがもれた。じぶんがそんなメルヘンチックなタイプだとは知らなかった。
「なに?」
「いや、元気だなって思って。免許、持ってたんだ?」
「帰国したときにあったほうが便利だと思って、2年前に合宿行って取った」
危なげない手つきでハンドルをさばきながら、すこし明るくなり始めた横浜の街を走り抜けて高速に乗った。
横浜新道から横須賀方面に向かっている。
朝焼けの空を見るなんていつぶりだろう。
濃いオレンジからピンクに薄紫へと色を変える雲のグラデーションが美しかった。
朝日が昇るにつれ、まぶしくなったのか、孝弘が胸ポケットに差していたサングラスをかける。ふだんと違う横顔に、祐樹はなんだかドキドキする。
たかがサングラスくらいで、おれもちょろいな。
「いまの時間なら40分くらいかかるかな。眠かったら寝ててもいいよ」
「平気、眠くないよ。けっこうぐっすり寝たみたい」
「ああ、だいぶ運動したもんな」
「そうだね、おかげさまで」
にやりと笑う孝弘に祐樹はあえて作ったポーカーフェイスで返した。
ゆうべは確かにかなり運動したと言えるだろう。
祐樹の部屋で抱き合うと、どうしても声を抑えようと気にしてしまうけれど、ホテルにいるという解放感からか、昨夜の自分はかなり奔放だった気がする。
ベッドのせいかもしれない。スプリングのきいたベッドの上は、自分の部屋の布団とはまったく違っていた。
祐樹の痴態に煽られたのか孝弘のほうもテンションが高くて、やさしい扱いだったけれど濃厚に何度も求めてきた。
途中、コンビニに寄ってカフェオレを買って飲みながら、だんだん明るくなっていく空を眺めた。
早朝の高速は空いていて気持ちがいい。
中国でタクシーはしょっちゅう一緒に乗っているが、考えてみたらこんなふうにドライブするのは初めてだ。
逗子も横須賀も過ぎて、さらに先の衣笠インターで高速を降りた。孝弘は道を知っているようで迷いなく進んでいく。
「三崎港?」
「うん、日曜の早朝だけ、港で朝市やってるんだ」
「ふうん、知らなかった。その朝市で買い物するの?」
ちょっと戸惑った祐樹に、孝弘はいいやと答える。
「というより、目的は朝めしかな。買い物もできるけど、食材だからどうだろ? まあ、いいものあったら買って帰って、何か作るのもいいかもな」
駐車場は混んでいたが停められないほどではなかった。
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