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”ご忠告に感謝します。今後はもっと用心することにしましょう” 『高橋さん、待たせて申し訳ない』  そこへチャーリーが戻ってきて、祐樹のとなりに立つ人物を見た途端、あからさまにぎょっとした顔をした。  まずい、と焦る表情を取り繕うこともできず、視線がうろうろとあやしく泳ぐ。  祐樹がなにか言うより早く、エリックが皮肉な笑みを浮かべながら親し気に話しかけた。欧米風に両手を広げて見せるというアクション付きで。 『やあ、チャーリー。ずいぶん久しぶりじゃないか。前回の件できみはこのフロアには出入禁止になっていたと思っていたが、私の勘違いだったかな』 『いや、その、…出入禁止なんて、言い過ぎっていうか…。いやあの、その通りなんだけど。でもきょうは高橋さんに紹介したい人がいて、それで特別に入れてもらって、その…』  おどおどと言い訳する態度は、先ほど祐樹を案内して入ってきた時とは大違いだった。今すぐにでも逃げ出したいと腰が完全に引けている。 『へえ? きみがそんな仲介をするほど親切だったとは初耳だ。それで一体、彼にだれを紹介する気なんだ? 俺も知っている友人かな、こんなところまで来てるってことならぜひ挨拶を』 『あ、いや、残念ながらきょうは都合が悪くなったって連絡が入って。だから私はもう失礼するよ。高橋さん、行こう。申し訳ないけど、紹介はまたあらためて』  本当に紹介する気があったのか怪しい態度ではあった。 『そうですか、残念ですね』  祐樹はかるく肩をすくめた。 『じゃあ我々はこれで』  そそくさとチャーリーが帰ろうとする。   『いや、ユーキはここに残るよ』  さりげなく祐樹の腕を取りながらエリックがいい、ファーストネームを呼んだことでチャーリはますますぎょっとした顔でエリックと祐樹に視線をさまよわせた。 『きみがいないあいだに意気投合したんだ。用事がなくなったというならユーキは私とディナーをいただいていくよ』 『ああ、それはいいね。とてもすてきだ。…じゃあ高橋さん、そういうことで』  祐樹に口を開かせる間もなく、チャーリーは慌てふためいて逃げるように出て行った。  後ろ姿を見送ってエリックが英語でつぶやいた。 ”あれはクロだな” ”そうみたいですね。すみません、お手間をおかけしました。いろいろとありがとうございました”  チャーリーから救ってくれた礼をいって、祐樹はドアへ向かおうとした。  無駄足だったが仕方がない。どこかで軽く飲んで、ひとりで反省会だな。こんなくだらない手にひっかかるなんて。  そこへエリックの声がかかった。 ”ユーキ、ディナーの約束は?” ”は?”  いつそんな約束を交わしたというのか。

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