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孝弘の共同経営者に恋人として紹介されるとは思ってもみなかった。そしてそれが嫌じゃなかったのも、新たな発見だった。
はっきり恋人だと紹介されてうれしかったし、レオンがそれをごく自然に受け止めてくれたのもうれしかった。
孝弘が祐樹を追うことを最重要案件と言って、それをぞぞむが後押ししてくれたと知って、正直、なんとも言えない気持ちだ。
うれしいような照れくさいような、胸のおくがじんわりと温められて頬がゆるむような。
タクシーの窓の外を流れていくけばけばしいネオンを眺めながら、孝弘に手を握られてとても安らいだ気持ちになる。
「着いたばっかなのに、遅くまでありがと」
部屋に戻るなり、祐樹の頬を手のひらで包んで孝弘が口づけた。
ふたりになると孝弘はごく自然にあまい空気を醸しだす。それがくすぐったくて、祐樹はもぞもぞと身じろいだ。なんとなく気恥ずかしい。
「昨日から休暇だったから、おれは平気だよ。孝弘のほうが疲れてるでしょ、夕方まで仕事してたのに」
「まあ多少は。でも今回はそんな大変な仕事でもなかったな。こないだの中国出張に比べたら」
孝弘の苦笑に祐樹も先月の出張を思い出す。
けれどもふしぎなことに、トラブル続きでかなり大変だったはずなのに、それはあまり記憶になくて、鮮明に覚えているのは孝弘とのことばかりだ。
出張期間中どれだけ孝弘に振り回されていたか、いまになって思い知らされる。口説きまくったとレオンに話したとおり、本気を出した孝弘は祐樹が戸惑う間もなくぐいぐい押してきた。
あれこれ思い出した動揺をごまかすように孝弘の腕のなかから抜け出す。
「おれ、シャワー浴びてくる」
「あ、一緒に入ろ?」
明るい場所で裸が見れるからと、孝弘はよく一緒に風呂に入りたがる。そして一緒に入るとついつい触りあって抱き合うことになるのだけれど……。
「…いいよ」
やった、と無邪気な顔でよろこぶ孝弘はかわいい。
でもこれは見せかけで、その気になれば驚くくらい男の貌で祐樹を翻弄するのだ。久しぶりに会えたのがうれしくて、ついOKしてしまったが早まっただろうか。
だが祐樹の心配をよそに、孝弘はごくふつうに祐樹を泡だらけにしてくるくると洗い、セクシャルないたずらは仕掛けてこなかった。交代で祐樹が洗ってあげるあいだも気持ちよさそうにしているだけだ。
ほっとするようながっかりするような。ってなにを期待してるんだか。
「疲れちゃった? 酔ってるし遅くなったし、今日はもう寝る?」
でもタオルで髪を拭いてくれながら孝弘が訊くので、気を遣ってくれてたのだとわかった。時計は深夜一時近い。
「明日の朝、いくらでも寝坊できるんだから」
祐樹はちょっと照れた笑みを浮かべて、正直な気持ちを口にした。
孝弘が欲しいよ、と。
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