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15-3
「じゃ、乾杯」
冷えたビールが喉をすべり落ちていき、一気に夏気分になる。
「さっきまでエアコン効いたショッピングセンターにいたのに、変な感じ」
「うん、俺も。街のなかも好きだけど、なんか急に体動かしたくなったんだ」
孝弘がごくごくと喉を鳴らしてビールを飲む。
それが男っぽくて好きだ。
じっと見ていると、なに?と首をかしげる。
「喉が動く感じが好きだと思って」
「喉?」
聞いた孝弘がすこしうろんな表情になる。
「もっとほかに好きなパーツないの?」
「膝」
「膝?」
「孝弘、ハーフパンツが多いでしょ。膝のかたちとかふくらはぎがかっこいいと思ってた」
「なに、脚フェチ?」
「そうかな。あ、指も好きだよ。孝弘って手が大きいよね」
「なんでそんなちいさいパーツばっか」
孝弘が笑い出す。
祐樹はにっこり笑って続けた。
「しっかりした肩も引き締まった足も目つきの悪い目もちょうどいい高さの腕も器用な舌も滑らかな腹もよく動く腰も孝弘の体はぜんぶ好き」と。
途端に孝弘の目が不穏な光をたたえる。
「…俺、挑発されてる?」
「いいえ、ほんとのこと言っただけ」
「海、行こう」
突然、手を差し出された。
その手を握って立ち上がる。
立ちあがっても孝弘が離さないので、そのまま手を引かれて日差しにさらされて熱くなった砂のうえを跳ねるみたいに歩く。それがおかしくて、くすくす笑った。
水際まで来ると、足の指が波と砂にくすぐられた。波とともに足のうらの砂が引いていく感じに海だと肌が思い出す。
「シャツ濡れちゃうけど」
「いいよ。帰りのシャツは買ってあげるから」
それとも素肌にカーディガンで帰る?なんて意地悪な顔で訊く。素肌に直接ってエロいよな、とにやにやするのででこピンしたが、孝弘のにやにや笑いは止まらなかった。
波打ち際は浮き輪をつけた子供連れが多かったが、わりと波があるので、ある程度沖へ進むと人はかなり少なくなる。
胸あたりに水深が来たところで、孝弘の手が腰に巻きついてきた。
明らかに意図を持った動きで抱き寄せられて祐樹がうろたえた。
「ちょっと、孝弘」
「あんなに挑発されたら、おとなしくしてられないだろ」
「こんなとこで、ダメだから」
「誰も見てないよ。見てたってふざけて遊んでるとしか思わない」
孝弘が器用なのは舌だけではない。長い指がシャツをくぐって素肌に触れてくる。大きな手が腰から背中、腹にまわってするっと胸まで撫で上げて、水のなかでぞくりと体が震えた。
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