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「いいんじゃない。かわいいポーチとかいくつあってもいいらしいよ」
必要に応じてガイドなどもしている孝弘は女の子たちの買い物にも付き合うのだろう。かわいくて質がいいから女の子受けするんじゃないかとずらりと並んだ雑貨を見て言う。
中国らしい色合いの刺繍ポーチや、色鮮やかな模様入りのメモ用紙、真珠の粉入りのハンドクリームなどを見繕った。どれも女の子に人気だと孝弘が教えてくれたものだ。
「なあ、なんか記念に買っていこうか」
不意に孝弘が言った。
「え?」
「あー、でも香港でわざわざ中国商品買うのも変かな。…まあ別にいいか」
目の前に並ぶ中国チックな商品を見て首をかしげたものの、ひとりで納得して、祐樹に笑いかけた。
「旅行の記念に何か買っていこうかって話。マグカップでもボールペンでもシャツでもいいから。何がいい?」
これは、揃いで何か買おうという意味だろうか。そうだよな、たぶん。
「え、と。急に言われても…、じゃあ今から探してみようか」
ということで、今度はじぶんたちへのみやげを探すことになった。
考えたら食事して街を歩いて海やテーマパークで遊んだだけで、じぶんのための買い物はしていない。そもそも、みやげが欲しいなどと思いもしなかったのだ。
「祐樹は家にはみやげ買わなくていいのか?」
孝弘が訊ねてくるのに、さすがに長期休暇取っておいて手ぶらで帰宅はまずいかと、それもついでに探すことにした。
ろくに旅行をしたことがないからそういうことも思いつかなかった。中国出張は頻繁だが、実家にめったに顔を出さないのでみやげを買ったこともほとんどない。
でもさすがに今度の香港から帰ったら、一度実家に行くつもりではいたのだ。
両親と実家にいる3番目の兄、近くに住む長男夫婦とその子供2人。まとめてお菓子という手もあるが、それではちょっとつまらない気もする。
孝弘はと訊くと、家族へのみやげはいらないということだったので、一緒に売り場を回って、小学生女子2人にはチャイナドレス風のワンピースと刺繍入りのポシェット、両親と長男夫婦と兄にシルクのパジャマ(好みに合わない柄でもパジャマなら着るだろうという判断で)、母と義姉に調味料を何種類かと真珠クリームを追加で選んだ。
じぶんたちへのみやげって何がいいんだろうと迷っていたら、孝弘がこれは?と訊ねた。
金色がまぶしいアクセサリー売り場だったので、一瞬どきっとしたが、孝弘が指差したのはストラップやキーホルダーのコーナーだった。
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