5 / 7

第5話

「はい、これ。プレゼント」  慶吾の誕生日当日、カフェでケーキを食べた後で俺は袋を手渡した。  慶吾は目を丸くして、差し出された物を受け取った。 「これ……綾瀬が、買ってくれたの?」 「他に誰がいんだよ。開けてみてよ」  なんだか緊張した面持ちの慶吾は、包み紙に亀裂が入らないように丁寧に剥がしていく。  中からは、無地の茶色のカーテンが出てきた。 「これ……」 「この色だったら落ち着いてるし、いいだろ? 俺考えたんだ。カーテン、プレゼントすればいいんじゃんって」 「あぁ、そうだね」 「あと、これ」  今度は掌サイズの小さな箱を慶吾に差し出す。  慶吾はまた遠慮がちに受け取って、箱の中身を開けた。 「カーテンが誕生日プレゼントっていうのも、なんか味気ない気がしてさ。似合うと思って。それで実は、俺とおそろいでさ」  俺は服の中に隠して付けていたネックレスを取り出し見せた。  馬のひづめの形のモチーフが付いていて、自分のは赤、慶吾のには青い石が埋め込まれている。 「それくらい小さければ、場所取らないだろ」 「これ、高かったんじゃない? 二つも貰っちゃって……」 「思ってるほど高くはないし、俺、意外とバイト頑張ってるから大丈夫」 「そんな……俺のために、わざわざありがとう」  慶吾は無理して笑っているみたいだった。  もしかして、二つもあげちゃったから気を遣わせちゃったのかな。  でも俺は、どっちもあげたかったからいいんだ。  それにこのネックレス、お揃いだし。  そんな時、俺のスマホにニュースアプリの情報が飛び込んできた。  ふと目をやると、人気漫画のアニメ映画化が決定したと書かれていたので、俺は興奮気味にスマホに食いつき、慶吾にスマホの画面を見せた。 「これ、今度は映画になるんだって。俺、この漫画好きで何度も読み返してるんだよね!」 「……へぇ、そうなんだ」 「あ、知らないか。ごめん」  一人ではしゃいでしまい、ちょっと恥ずかしくなる。  たまにこんな瞬間があるけど、別に悲しくはならない。慶吾が知らないことは俺が教えてあげればいいんだから。  そのまま慶吾の家に行きたかったけど、慶吾は青白い顔をしていたのでやめにした。 「大丈夫? 俺、家まで付いていくよ」 「いや、いいよ。良かったら明日、家に来てくれる? それまでにはカーテン、ちゃんと付けておくから」 「おう。わかった」  俺たちはその場で別れた。  これでやっと、慶吾の家も普通の家らしくなるし、気兼ねなくセックスも出来るかも。  馬鹿な俺は、そんなことだけを考えていた。

ともだちにシェアしよう!