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第5話
「はい、これ。プレゼント」
慶吾の誕生日当日、カフェでケーキを食べた後で俺は袋を手渡した。
慶吾は目を丸くして、差し出された物を受け取った。
「これ……綾瀬が、買ってくれたの?」
「他に誰がいんだよ。開けてみてよ」
なんだか緊張した面持ちの慶吾は、包み紙に亀裂が入らないように丁寧に剥がしていく。
中からは、無地の茶色のカーテンが出てきた。
「これ……」
「この色だったら落ち着いてるし、いいだろ? 俺考えたんだ。カーテン、プレゼントすればいいんじゃんって」
「あぁ、そうだね」
「あと、これ」
今度は掌サイズの小さな箱を慶吾に差し出す。
慶吾はまた遠慮がちに受け取って、箱の中身を開けた。
「カーテンが誕生日プレゼントっていうのも、なんか味気ない気がしてさ。似合うと思って。それで実は、俺とおそろいでさ」
俺は服の中に隠して付けていたネックレスを取り出し見せた。
馬のひづめの形のモチーフが付いていて、自分のは赤、慶吾のには青い石が埋め込まれている。
「それくらい小さければ、場所取らないだろ」
「これ、高かったんじゃない? 二つも貰っちゃって……」
「思ってるほど高くはないし、俺、意外とバイト頑張ってるから大丈夫」
「そんな……俺のために、わざわざありがとう」
慶吾は無理して笑っているみたいだった。
もしかして、二つもあげちゃったから気を遣わせちゃったのかな。
でも俺は、どっちもあげたかったからいいんだ。
それにこのネックレス、お揃いだし。
そんな時、俺のスマホにニュースアプリの情報が飛び込んできた。
ふと目をやると、人気漫画のアニメ映画化が決定したと書かれていたので、俺は興奮気味にスマホに食いつき、慶吾にスマホの画面を見せた。
「これ、今度は映画になるんだって。俺、この漫画好きで何度も読み返してるんだよね!」
「……へぇ、そうなんだ」
「あ、知らないか。ごめん」
一人ではしゃいでしまい、ちょっと恥ずかしくなる。
たまにこんな瞬間があるけど、別に悲しくはならない。慶吾が知らないことは俺が教えてあげればいいんだから。
そのまま慶吾の家に行きたかったけど、慶吾は青白い顔をしていたのでやめにした。
「大丈夫? 俺、家まで付いていくよ」
「いや、いいよ。良かったら明日、家に来てくれる? それまでにはカーテン、ちゃんと付けておくから」
「おう。わかった」
俺たちはその場で別れた。
これでやっと、慶吾の家も普通の家らしくなるし、気兼ねなくセックスも出来るかも。
馬鹿な俺は、そんなことだけを考えていた。
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