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どしゃ降り 第2話

「やだ、降って来た!!」 「あ~もう!!傘ないのに~!!」  突然のどしゃ降りに道行く人々がぼやきながら足を速めた。  職場に戻る途中だった村雨も、折り畳み傘を出すために急いで近くの軒先に入った。  少し待ったら止むかな?  村雨が空の様子を見ようと少し前に乗り出した時――  キキーーッ!!!!  雨を切り裂くような耳障りな甲高い急ブレーキの音。  そのすぐ後に、空で鳴り響く雷に混じって鈍い衝突音がした。  道行く人が立ち止まり、一斉に音のした方を見る。  村雨もつられてみんなと同じ方向を見た。  軽自動車が運転ミスか何かで勢い余って歩道に乗り上げ電柱にぶつかったらしい。  近くにいた人が様子を見に行くと運転手が自分でドアを開けて出て来た。  車のフロント部分はグチャグチャだが、奇跡的に運転手は無事のようだ。  それを見てみんな安心したようにまた歩き始めた。  しかし、村雨は運転手が生きていたことに安堵しつつも、その場から動けなくなってしまった。  雨……車の事故……  この二つが重なってしまったせいで、あの日の記憶が嫌でも頭に浮かんでくる。  落ち着け……考えるな……思い出すなっ!!  村雨の周囲だけ時間が止まってしまったかのように感じた。  雨の音が、雷の音が、耳の奥に響く。  記憶の渦が頭の中でグルグルと回って、あの日の出来事が浮かんでは消えていく。  見えない何かにじわじわと首を締められているようだ。  呼吸をすることすらままならない。    あぁ……いっそこのまま…… 「キャーッ!!」  ひと際大きい雷の音がして、前を通っていた女性が叫んだ。  その声で、はっと我に返る。  とにかく、ここを離れないと……!  重い足を引きずるようにして歩き出した。  事故現場が見えない所に行きたかった。  目についた横道に入る。  通ったことがない道だが、今はそんなことどうでもよかった。  少し歩くと、昔ながらの喫茶店が目に入った。  『カフェ・レインドロップ』という看板が出ている。  村雨は救いを求めるように扉に手をかけた―― ***

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