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雨の日 第18話(レイニーデイ第8話)
自分のせいで村雨までずぶ濡れになってしまったからと、住居の方に招かれた。
村雨は辞退しようとしたが、春海に背中を押されて半ば無理やり2階に連れて行かれてしまった。
言われるがまま脱衣所で服を脱いでいる間に春海がなんとか村雨に合うサイズの服を探してくれた。
「服ありがとうございます」
「やっぱりちょっと小さいですよね……すみません、わたしが持ってるのではそれが一番大きいんですけど……」
「全然大丈夫ですよ、それより、本当にケガはしてないんですか?」
「……見ますか?」
ずっと座り込んでいたのは、足を挫いたとかケガをしたとかじゃないのかと思い心配していると、春海が裾を捲って足をみせてきた。
まさか生足を見せられるとは思っていなかったので面食らってしまう。
キレイな足だな……って、変態か俺はっ!!
細くて色白の足にちょっとドキドキしながら、平静を装ってケガの具合を確認する。
「軽い打ち身と擦り傷だけっぽいですね」
「だから大丈夫だって言ったじゃないですか……」
春海がちょっとむっとした顔で口を尖らせた。
「すみません」
ちょっとしつこく聞き過ぎたか。
っていうか、俺なんかに心配されたくないよな……
「いえ、こちらこそ助けていただいたのにお礼も言わずにすみません!!本当にありがとうございました。でも、どうして……」
村雨がしょんぼりと項垂れたのを見て、春海が慌ててお礼を言ってきた。
俺が勝手にやったことなんだからお礼なんて言う必要ないのに……なんだか、逆に気を使わせてしまった。
「さっきは……名前を呼ばれたような気がして……それで振り返ったら倒れているあなたが見えたので……気づけて良かったです。でもなんであんなところに?」
「え……あの……村雨さんが見えたので……」
春海の言葉に、一瞬固まった。
「え……俺ですか?」
俺が見えたから、あそこにいたってどういうこと?
「あの……先日のことを謝りたくて……だけど、名前しか知らないし、あれから村雨さんはお店に来てくれないし、どうしようかと思ってたらちょうど見かけたので居ても立っても居られなくなって……」
え?春海さんは一体何を言ってるんだ?
謝る!?
村雨は、急いで手を前に出して春海の言葉を遮った。
「ちょちょちょ~~~っと待ってください!?謝るのは俺の方ですよ!?あの時、その……キスをしたのは俺からだし……」
あの時、最初は雰囲気に流されてどちらからともなくという感じだったが、先に動いたのはたぶん俺だ。
それに、その後はもうずっと俺が夢中になって春海さんの口唇を貪っていたわけで……
一体どこに春海さんが謝る必要があるのかわからない!!
「わたしはずっと前から村雨さんに好意を抱いていたのだと思います。あの時、村雨さんに触れられて嬉しかった。わたしのそんな想いが、知らず知らずのうちに村雨さんを誘うような仕草として出てしまったのかと……だから、あのキスはわたしのせいです。村雨さんのせいじゃないので……気にしないでください」
春海は少し目を伏せて、頬を強張らせながら微笑んだ。
え、春海さんが俺に好意を抱いていた?
俺に触れられて嬉しかったって……じゃあ、俺嫌われてないの?
いや、それよりも、春海さんのせいって……
なんだよそれ。
春海さんが俺を誘った?だから春海さんのせい?
そんなわけないだろ!?
たしかに、春海さんの瞳に惹き付けられてはいたけど、キスをしたのは――
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