20 / 61
雨の日 第19話(レイニーデイ第8話)ご挨拶
村雨は、春海の言葉にショックを受けていた――
あれは完全に村雨が自分の意思でしたことだし、村雨が悪い。
それなのに、春海はそれを全部自分のせいだと言う。
あれからずっと、春海さんは自分のせいだと思って、自分を責めていたのか?
その時、ハッと気がついた。
俺に好意を抱いていたって言ってたけど、もしかして、春海さんも悩んでた?
同性だから、想いを伝えても仕方ないし、好きになっても迷惑をかけてしまうだけだって……だとしたら、春海さんが全部自分のせいにしてあのキスをなかったことにしようとしているのもわかる気がするけど……
でもそれなら余計に……俺がしたことなのに、春海さんにあんなことを言わせてしまった自分自身に腹が立つ。
「わかりました」
あれを自分のせいだと春海さんが言い張るのなら――……
「良かった、それをずっと伝えたく……て……ぇ?」
村雨は、春海が首にかけていたタオルに手をかけて自分の方にグイッと引き寄せると、口唇を重ねた。
驚いて固まっている春海の顔に村雨の前髪から雫がポタリと垂れて流れていった。
「これは、俺がしたいと思ったからしました」
村雨は、軽いリップ音をたてて口唇を離し、ハッキリとそう言うと、春海の顔に落ちた雫をタオルで優しく拭き取った。
「え、あの……」
「俺はあなたのことが好きです。だからあの時キスをした。実は俺も男を好きになったのは初めてだから、自分の感情がよくわからなかったんですけど……きっと俺もずっと前からあなたに恋をしていた。あなたに逢いたくてここに来ていたんです。だけど、無理やりキスをしてしまったので、あなたに嫌われてしまったのではないかと思って……」
考えてみたらいつも村雨は告白される側で、誰かを自分から好きになったり、好きになった人に自分から気持ちを伝えたりしたことはない。
春海に言いたいことはたくさんあるのに、自分の想いを言葉にするのがこんなに難しいだなんて知らなかった。
それでも、自分の気持ちをちゃんと伝えたいと思った。
伝えなきゃいけないと思った。
村雨の言葉を聞いて茫然としていた春海の顔が、徐々に赤く染まっていく。
視線が泳ぎだしたかと思うと、パッと俯いた。
それは、春海が店で村雨と会話をしているときによく見せる表情だった。
あぁ、あれは人見知りじゃなくて……俺が好きって意味だったのか。
そう思うと、自然と口元が綻んだ。
「き……嫌いになんか……」
春海があわあわしながら、ようやく言葉を絞り出した。
あ~やっぱり可愛いっ!!
春海さんに嫌われてなくて良かった~……
っていうか、むしろ両想いってこと!?
ヤバい、顔がにやける……
村雨は春海の頭をポンポンと撫でた。
驚いて顔を上げた春海に微笑みかけると、真っ直ぐに春海の目を見た――
「そうだったみたいですね、安心しました……じゃあ、改めて。あなたのことが――……」
***
~ご挨拶的な何か~
ここまで読んでくださってありがとうございます。
短編で書いた「レイニーデイ」の村雨視点ということで書いてきた「ティアリーレイン」ですが、一応「レイニーデイ」と内容が被っているのはここまでとなります。
村雨視点は最初の方はなかなか春海との絡みがなく、テンポも悪いのですが、根気強く読んでくださってありがとうございました!!
リアクションもありがとうございます!とっても嬉しいです!
ここで一旦区切ろうかと思ったのですが、「ティアリーレイン」のタイトル回収ができていないので、このままもうしばらくお付き合いください。
第20話からは付き合い始めてからの話になります。
次からは、春海視点も混ざって来るので、タイトルの横に(春海)(村雨)とどっちの視点か入れておきますね。
それでは、この後もよろしくお願いいたします!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!!
***
ともだちにシェアしよう!