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ハロウィン 第32話(村雨)
油断した。
どちらかと言うと酒には強い方だ。
自分の限界もわかっているので、もう学生時代のように酔いつぶれることもない。
ビールの中に他の酒が入っているのも、気づいていた。
でも、簡単には酔わないと自負する気持ちが、油断を招いたのだと思う――
***
目を覚ますと、春海のベッドだった。
水を貰って飲んだところまでは覚えている。
その後、意識はぼんやりと混濁し、次にはっきりしたのは……
頭に鈍い痛みを感じて前を見ると、メイド服を乱され半裸状態で泣いている春海の姿だった。
どこからどう見ても強姦未遂の現場です……はい……
状況と春海の怯えた瞳から、犯人は俺。
逃れようがない事実。
恐らく最後まではしていない。
たぶん、そうなる前に春海さんが俺を突き飛ばして止めてくれたのだろう。
それだけが救い。
怯えて震えているくせに、涙声で「大丈夫です」と言う春海が痛々しくて、直視できなかった。
付き合ってから、セックスは春海がその気になるまで気長に待とうって我慢してきたのに、酔っぱらって襲いかかるとか最悪すぎる……
メイド服姿の春海にテンションが上がっていた。
春海が他の客と楽しそうに話している姿に嫉妬した。
ちょっとイライラしているところを常連客に煽られて、つい飲み比べを受けてしまった。
珍しく酔ったせいで、自分の欲望を制御できなかった――
春海に何をしたのか、全然思い出せない。
いや、違う。
本当は薄っすらと……覚えている。
柔らかい肌といい匂いが頭の奥を刺激してきて……
欲しくて……全部欲しくて……俺のものにしたくて……誰にも渡したくなくて……
ただ手に入れたいという獣のような本能に掻き立てられていた。
遠くで、春海の制止する声が聞こえたような気がするのに……
涙ぐんだ瞳に興奮して、もっと泣かせたいと……
え、ちょっと待て!俺ってそんなサドっ気あったっけ?
今までノーマルセックスばかりだったし、変わったプレイがしたいだとか、泣かせたいだとか、思ったこともなかった。
どうして春海さんには、こんなに今までにない感情が次々と湧いてくるんだろう……
でも……春海さんただでさえセックス怖がってるのに、今回ので完全にトラウマ植え付けちゃったよな……
もう俺とはセックスしたくないとか言われたらどうしよう……
いや、それよりも先に!!
別れるとか言われたら!?
だって、俺が春海さんに無理やり襲いかかるのこれで2回目だぞ……
前回のあの付き合うきっかけになったキスは、無理やりでも春海さん気持ち良さそうだったし、春海さんもあれは嫌じゃなかったって言ってくれてたけど、今回のはダメだろ……
好きなのに……誰よりも大切なのに……
泣かせて、怖がらせて、気を遣わせて……
何なの?俺バカなの!?いやホントにバカだろっ!!
あ~くそっ!マジで俺何やってんだ!?
このまま消えてしまいたい……
でも、その前にちゃんと春海さんに謝らなきゃ。
嫌われちゃったかな……
春海さん……許してくれるかなぁ――
村雨は悶々としながら、そのまま一睡もせずに夜明けを待った。
***
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