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コレジャナイ感 第41話(村雨)
「さぁ、どこからでもどうぞ!!」
「え~と……うん、あの……春海さん?そんなに構えなくても……」
徐々に慣らしていこうということになってから、また毎日春海さんに触れられるようになった。
以前は村雨が隙を見つけては勝手に春海にスキンシップを取りにいっていたのだが、今は春海も積極的にスキンシップを取ろうと頑張ってくれている。
それはいいのだが、何かが……何かが違う気がする。
春海なりに精一杯頑張ってくれているのはわかるのだけれども……なんというか……コレジャナイ感が……
だって、顔を真っ赤にして目をギュっと瞑って両手を広げて「さぁどこからでもどうぞ」と言われても……「はい、どうも」と抱きつく気にはならないだろう?
いや、抱きつくのはいいけどね?
こう、なんていうか……いまいち情緒に欠けるというか……うん、全然ムードがないっ!!!!
「村雨さん?」
村雨がなかなか抱きついて来ないので、春海が恐る恐る目を開けて不安そうに村雨を見上げて来た。
ぅ゛……ん゛ん゛~…………くっそ可愛いなおぃ……!!
いろいろと言いたいことはあるけれども、可愛いものは可愛い。
ので、結局抱きつく。
「わっ!時間差ですか!?」
「ん~だって今の顔がめちゃくちゃ可愛いかったから」
「今の顔?」
「ちょっと不安そうな上目遣い?」
「なんですかそれ!?じゃあ、わざと焦らしたんですか!?」
春海がちょっと頬を膨らませて口唇を尖らせた。
「わざとってわけじゃないですけどね……そうやってむくれてるのも好きですよ。その口唇、キスしたくなる」
「っ!?」
春海が口唇を戻す前に、チュッと軽くキスをする。
「~~~~~っ!!」
春海が口を手で押さえて俯いた。首まで真っ赤だ。
ぅ~ん……可愛いんだけど……でも……
春海さん、その反応……女子高生もびっくりだよっ!?
初めてキスしたわけでもないのに……初心 すぎるっ!!!
なぜかハロウィン事件の前よりもキスやハグに対しての春海の反応が過剰になっていて、一向に慣れる様子がない……
ハロウィン事件のことがあるので、村雨もあまり強引に出来なくてちょっと弱気になっている部分もある。
そのせいもあってか、セックスどころか、ディープキスさえなかなかできない状態だ。
でもまぁ……春海が自分から前向きにセックスについて考えてくれて、村雨としたいと思ってくれているのは嬉しい。
こうやってイチャイチャできるだけでも良しとするか……!
「さてと、じゃあ今日は終わり!そろそろ寝ますか」
「え?あ……はぃ……」
春海が少し残念そうな顔をする。
「や……んん゛、おやすみなさい」
やめて!!そんな顔されたら押し倒したくなっちゃうでしょ!!
口から出そうになった言葉を飲み込んでおやすみを言うと、春海の額にキスをして寝室まで見送る。
寝るのは、相変わらず別々だ。
だって、一緒に寝ると俺が襲いたくなるから!!!
春海さんが頑張って歩み寄ってくれようとしてるのに、それをまたぶち壊すようなことはしたくない。
というか、さすがに三度目はもう許してもらえる気がしない!!
村雨は毎晩、煩悩と本能と理性に囲まれながら自分自身と戦っているのだ。
はぁ……春海さんとエロいことができるのはいつのことやら……前途多難だ……
***
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