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春海の覚悟 第57話(春海)※

 村雨を見送った後、しばらく放心していた春海だったが、はっとして慌てて浴室に駆け込んだ。  どどどどうしよう……勢いで言っちゃったけど……するなら、えっと確か準備が……  内心バクバクだったが、以前ネットで調べたことを思い出しながら、浴室で準備をした。    初めてだし、やり方が正しいのかもわからないまま洗浄し、ぐったりしながら風呂から出ると、ちょうど村雨が帰って来た。 「お風呂入ってたんですか?」 「あ……はぃ……あの、準備を……」 「え、一人でしたんですか!?俺も手伝いたかったな~……」 「ええええ!?いやいやいや、準備は自分でしますっ!!」  を手伝うとか……そんなこと村雨さんには絶対させられませんっっ!!!!!  恥ずかしさで死んでしまうっっっ!!! 「残念。じゃあ、俺もシャワー浴びて来ますね」 「あっ……の……」  浴室に向かおうとした村雨の手を掴んで引き留める。 「村雨さんはそのままで大丈夫ですっ!!」 「え?いや、でも……」 「村雨さんの匂い好きだから……そのままがいい」 「ん゛ー!?……ちょっとストップ!!一旦落ち着きましょう!?……あのね、俺も結構余裕ないんですよ。だからあんまり煽らないでもらえます!?」 「……え?」  別に煽ってなんか……  春海がキョトンとしていると、村雨がやれやれという顔でため息を吐いた。 「いや……嬉しいんですけどね。ただ、あんまり煽られると優しくできなくなりそうだから……あー……まぁいいや。ベッド行きましょうか――」 *** 「あの……恥ずかしいので灯りを消してもいいですか?」 「ん~……常夜灯ならいいですよ。完全に真っ暗にしちゃうと危ないでしょ。俺も慣れてないからケガさせちゃうかもだし」 「え……でも」 「恥ずかしいなら目瞑ってて?」  村雨さんが灯りを常夜灯にしてくれたが、まだ結構はっきり見える。  上着を脱いでいる村雨の腹筋がチラッと見えた。  ひゃっ!村雨さんの裸っ!!筋肉ヤバいっ!!何そのエロい身体!!  自分も見られているということなど完全に頭から抜けて、村雨の裸にドギマギしてしまう。  男同士なのに裸を見てドキドキしている自分が恥ずかしくなって、両手で顔を隠してギュッと目を瞑った。 「こぉら、顔隠しちゃだめでしょ。キス出来ない」 「ぁ……っ」    村雨がクスクス笑いながら春海の手をのけて、口唇を重ねてきた。  余裕がないと言っていたくせに、村雨は緊張している春海を安心させるように優しく情熱的なキスをした。   「ん……っふ……ぁ」  キスをしながら、村雨の指が胸から腹部にかけてスッと撫でてきた。  春海は、村雨の指が素肌に直接触れているのを感じて、初めて服を脱がされていることに気づいた。  え、わたしもしかして裸!?いつの間に脱がされたの……!?    村雨のように引き締まっているわけでもない、かと言って女の子のように柔らかいおっぱいがあるわけでもない中途半端な自分の身体がなんだか申し訳なくて、思わず手で身体を隠した。  村雨がキスをしながら器用に春海の手をつかまえると、グイッと春海の頭の上で交差させた。 「隠すんだったらこの手、縛りますよ?」 「ふぇ!?すすすみませんっ!!隠しません!!」 「よし、イイ子」  観念して両手を顔の横に置いたものの、そのままだと無意識に手が動いてしまうかもしれないと思った春海は、迷った末に枕を握りしめた。    春海の身体を、村雨の指が這っていく。    村雨さんの手……あったかくて気持ちいい……  素肌に触れられて恥ずかしいのに、村雨の手の温もりはなんだか安心する……  触れているのがわからないくらいのソフトタッチなのに、指が這った後が熱を持ったみたいに疼いた。  くすぐったくて身体をよじると、村雨が背中側に指を滑らせた。 「はっ……村雨さ……ん」  ギュッと閉じていたはずの瞼が、気持ち良さに思わずトロンと開いた。  目の前の村雨は、繊細で丁寧な愛撫とは裏腹に呼吸は荒く今にも飛びかかってきそうな雄の目をしていた。    あ……  村雨が顔を上げてゆっくりと視線を上に移し春海の目を見た。  春海はその目に射抜かれて、視線が逸らせなくなった―― ***

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