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 それは全く御仏の慈悲以外の何物でも無かった。  私を度々オークションに招待した日本のファミリー、凌征会のリーダーからアクセスが入った。 『狙われています、助けて下さい』  彼は、野心家で私と同じように冷徹な男だった。私は彼を嫌いではなかったが、彼は私の意に背くことをした。  彼自身は気付いていないが、彼が送ってきたある『商品』のカタログが私にはひどく不快だった。  その商品の名はリョウ-タカセ。十代の青年で、大勢の男にレイプされる画像と『開通済み』の文字、オークション開始時の『値段』が記されていた。  東洋人、特に日本の青年は裏社会では人気が高い。異常な性癖を持った客達にとっては、肌も美しく従順で躾やすい。しかも慎み深い羞恥心の強い生き物ということで、同じ東洋人でも、中国や朝鮮のそれと比べて破格の値がつく。  だが、私が不快だったのは、彼、リョウ-タカセが、私の心に残る面影とそれとは無しに似ていたからだ。彼女は、アメリカの野蛮人どもに、金髪碧眼の獣達に暴行を受け、殺された。リョウ-タカセは男だったが、私はその光景を思い出して、ひどく不快になった。  私は彼を買い取る気にはならなかったが、部下をオークションに参加させることにした。リョウ-タカセの動向を探るためだ。  そして、カタログのリョウ-タカセはオークション前に『キャンセル』になり、数日後にそのデータが消えた。    凌征会の申し開きでは、オークション前に『ロス』、つまりは死んだか商品として提供できない状態になったか.....のいずれかだ。  私が探らせた情報では、リョウ-タカセはオークション前にビルから転落して瀕死の状態である男に保護された、という。  ミハイル-レヴァント......ロシアンマフィアを仕切る西洋の獣。若く美しく、高潔な素振りをした獣達の『皇帝』。私の最も憎むべき存在......。    私は凌征会のリーダーを香港に潜入させることにした。機会を見て、私自身で制裁を加えるために、私を最も不快にさせる過失を犯した罪を購わせるために......。    そして、私は仏の慈悲に出逢った。  美しく気高い刺客(スークー)、殺戮の天女に。

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