10 / 122

♥05.昨日の記憶(2)

 ジークの性感が昂ぶるほど、どんどん色濃くなっていく|血の作用《匂い》のせいもあるのだろうか。気がつけばアンリも幾分高揚している。  それでも、ジークの同僚や隻眼の狼などに比べれば影響はきわめて些少だった。  基本的にそういう感覚には疎いはずのリュシーですら、何か感じるところがあったというのに、これほどの距離にいてアンリの頭は冴えている。  アンリはジークの顔を見下ろしながら、確かめるように内側《なか》を探った。 「ああっ、あ、も……っ、はや、く……っ」  内壁を擦るたび、ジークの背筋がびくびくと跳ねる。  焦らすように動きを止めれば、泣き言めいた嬌声と共に、すぐさまジークの手が伸びてくる。  しかもその指先は、アンリの指もろともに自分の中へと入り込もうと動き――。 「――…」  させるままにしていたアンリは、それが少しずつ内へと潜り込んでいくのを見て、大きく息を吐いた。 「……躾がなってないな」  アンリは低く呟くなり、ずるりと指を引き抜いた。当然のように、ジークの手も剥がし取る。 「や……っな、なんでっ……」 「お前に文句を言う権利はない。いいから黙って私に従え」  言うなり、アンリは自らの衣服を脱ぎ捨てる。  朱銀色の刺繍をひらめかせ、黒い長衣が床に落ちると、あらわになったしなやかな体躯が有無を言わさず覆い被さった。 「その熱を収めたいんだろう」  囁きながら、アンリはいっそうあわいを開かせ、その中心へと屹立を宛てがう。  その瞬間、ジークの面持ちが歓喜に沸くように蕩けた。 「ああっ、それ……っはや――」  舌足らずな懇願に合わせて、密着した入口が食むように収斂する。 「言っておくが――私は安くはないからな」 「ああっ……!」  刹那、アンリは一気に最奥を穿った。  ジークが背筋を弓なりに反らせながら、甘やかな悲鳴を上げる。  思ったよりも物理的な抵抗を感じないのは、ジークの体質――正しくは血の作用――のせいだろうか。あるいは、止めどなく伝い落ちているジーク自身の体液や、アンリの用意した薄桃色の液体もそれなりの助けとなっているのか――。  窮屈なほどしっかりと食い締めてくる内壁は、けれども、適度に解れてもいて、やがてアンリがゆっくり抽挿を開始するころには、それに合わせて淫猥な水音を立てるまでになっていた。 「は、ぁ、あぁっ、ん……っ」  奔放な嬌声に合わせて、薄っすらと粘液を纏ったままのジークの胸が、てらてらと光りながら忙しなく上下している。アンリは戯れに手を伸ばし、その表層にそっと触れた。  焦らすように指先を滑らせると、寒いみたいに肌が粟立ち、掠めてもいない突起までもがたちまち固く勃ち上がる。色濃くしこって震えるそれを、アンリは試すように爪で引っ掻いた。 「あ! あっ……!」  ひときわ高い声が上がる。ジークの背筋がびくりと跳ねる。  アンリは弾いたそれを摘み上げると、捻るようにしながら軽く引っ張った。粘液で滑って指から離れれば、今度はそれを肌へと埋めるように押し潰し、そしてまた痛いくらいに引っ張り上げる。 「ぃあぁっ、ぁ、それっ、んぁ……っ」  片手は胸に残したまま、もったい付けるように腰を引けば、いっそう露骨な吐息が漏れる。追い縋るように浮き上がるジークの身体を押さえ付け、再び奥へと戻しながら、その途中、アンリは敏感に反応する場所を不意打ちのように擦り上げた。

ともだちにシェアしよう!