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06.リュシーの問診(3)

「客観的なものは……おそらく封書の方に書いてあると思いますので、ここではあんたの……」 「はい」 「あ――…えっと。あなたから見た症状を教えて下さい」  リュシーは軽く咳払いをして、ペンを構えた。  そうして始まったのは、まるで問診のような問答だった。 「あ、の……ちょっといいですか」  簡単な質問にいくつか答えたところで、ジークはぱちりと目を瞬かせ、思わず少し身を乗り出した。 「なんですか?」 「先生って……すばらしく腕の立つ魔法使いの先生って、あなたなんですか?」  一瞬の間のあと、リュシーはきわめて心外そうな表情(かお)をした。 「あんなのと一緒にしないで下さい」  顔を背け、吐き捨てるようにこぼされた呟きは、またしても小さすぎて聞き取れない。ジークはその様子に僅かに首を傾げながら、「あの……?」と声をかけようとした。  けれども、それを阻むようにしてリュシーが口を開く。 「俺、ちゃんと名乗りましたよね」 「あ、そっか。先生の名前は、たしかアンリ……さん? あなたは」 「リュシーです。俺は魔法使いではありません」 「そうでした、リュシーさん」  言葉のわりに、リュシーが声を荒げることはなく、ジークは素直に反芻するように頷くと、改めて質問の答えを探した。

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