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♥10.意識がある中で(4)

 だから当然答えは出ないし、そのおかけで余計もやもやとしたものを抱えたまま、なおも燻り続ける熱を持て余すしかない。  例の香りは、一度達したくらいではほとんど変化することもなく、それどころか、次にはそれを上回る効果を持って、ジーク自身をもいっそう昂ぶらせていく。 「は……っぁ、なん、でっ……」  呼吸が乱れて、意識が霞む。ともすれば(いざな)われるままに、甘美なだけの世界に堕ちそうになる。  それを必死に振り払うよう、ジークはふるりと頭を振った。 「薬は効いているようだな」  そこに囁くような声が落ちてくる。耳元に吐息が掠め、それだけでびくりと肩が跳ねた。  *  *  *  二人分の重みを受け止め、カウチの座面が大きく沈む。  身動げば微かにスプリングの軋む音がして、たゆたうみたいに身体が揺れた。 「く……薬って……なん、ですか」  ジークの甘く掠れた声が、部屋の空気を震わせる。  浅く忙しない呼吸音が、それをますます艶かしいものへと印象づける。  吐息はすっかり熱を帯びていて、額にはじっとりと汗まで浮かんでいた。 「さっき飲んだだろう。……リュシーが飲ませたあれだ」 「リュシー……さんが、飲ませた……?」 「鎮静剤のようなものだ」  アンリは淡々と答えながら、組み敷いたジークの衣服を(ほど)いていく。  遅れてそれに気付いたジークが、「あの……」と声を発するが、まるでわかっていたように「診察だ」と遮られてしまった。 (診察……)  そう言われると拒否できない。  自分の状態を思うとひどく恥ずかしくもあったけれど、元々これ(・・)を診てもらうためにここに来たも同然なのだ。  サシャの指示によると、こうなってしまう(・・・・・・・・)のをどうにかして貰うために、アンリの治療を受けろとのことだった。

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