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♥10.意識がある中で(5)

「あ、あの……っ」  すでに乱れていた衣服を左右に開かれ、下半身を覆っていた衣服まで手早く寛げられる。  躊躇うように声を上げても、誰も助けてはくれない。構わず下着にまで指をかけられ、ジークはとっさに両腕で顔を隠した。  どろどろに濡れて張り付いていたそれが無くなると、晒された素肌が一気に粟立つ。  ジークが何とか正気を保っていられたのは、たしかにその薬のせいだった。  アンリの作ったそれ(・・)は、淫魔の血に直接作用し、内側から発情を抑制する効果があるらしい。  発情を抑え、意識を正常化し、のち、そのまま深い眠りに落とす――。  早い話が、そうやって強制的に鎮静化し、眠らせている間に、その波をやり過ごすというものだった。  その間、夢の中で擬似的にでも欲求が満たされれば、それだけに終わることもある。  だが、多くの場合、そう上手くはいかず、次に来る発情が過度なものになると言う報告も多かった。  それでもパートナーさえいれば問題ないからと、単に発情期をコントロールする目的で買い求める客も少なくないのだが――。 「途中で覚醒した場合のデータはなかったからな。ちょうどいい。……それに」 「……?」 (飲んだわりに、症状がほとんど収まっていない……)  どころか、そう時間も経っていないのに、より強くなっている気がするのも興味深い。  そう、アンリがリュシーに渡していた(それ)は、一方ではそんなふうにまだまだ治験段階と言えるものでもあったのだ。ジークにその兆候が出たら、すぐ飲ませるようにと言いつけておきながら、実際にはその結果――他にも判明していない効果や副作用――を、あわよくばアンリが知りたいがためにさせた処置でもあった。 「え、アンリさ……? えっ……あ、えぇ……っ」  ジークは思わず顔を覆っていた腕を退けた。  慌てて向けた視線の先で、アンリの手が脇腹から下へと下りていく――その気配を感じたからだ。  汗ばんだ肌の上を辿りながら、やがてその長い指先が触れたのは、先刻からまるで萎えることなく、天を向いていたジークの――。 「ア、アンリさん……! え、待……っ」  ジークが身体を起こそうとするのを、アンリの他方の手が阻む。もとよりろくに力の入らないジークの身体を制するのは容易かった。

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