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♥10.意識がある中で(8)

「んぁっ……あ、やぁあっ……!」  アンリの長い指が、蠕動する内壁を引きずるようにしながら、根本までしっかりと埋め込まれる。  ジークの背筋が艶かしくしなり、濡れた嬌声が部屋に響いた。  血の作用があるからなのか、そこに痛みらしい痛みはない。間もなくアンリが指を増やしても、圧迫感は増すものの、それを苦痛だとは感じなかった。  それどころか、すでに頭の片隅では〝もっと〟と思い始めている。中途半端とは言え、発情したままの身体が、意に反してアンリの愛撫を享受する。 「や、ぁ……なんか、おか、し……っ。あ、離……!」 「素直になってみろ」  当然かもしれないが、正気じゃない時とは態度がまるで違う。いささか呆れたような心地で、アンリは僅かに目を細めた。  だがその一方で、昨夜のように血の欲求に従うばかりの姿よりも面白いと感じ始めてもいる。 「や……な、なんで……っ、あ、あぁっ……や、待っ……待――!」  内側から触れるここ(・・)という場所を探り当て、何の前置きもなく指で挟むように圧迫する。  するとたちまちジークの背が弓なりに反れて、触れられてもいない屹立から白濁した液体が迸った。  勢いよく散ったそれが、ジークの腹部にぱたぱたと落ちる。アンリの黒いローブにも染みができた。  アンリの服を掴んでいたジークの手が、するりと座面に滑り落ちる。 「う、嘘……。そ……んなとこ、で、俺……」  ジークはうっすらと肌を染めたまま、反して蒼白となるほど呆然としていた。  弱々しくも、心底信じられないと首を振るジークの中から、アンリは無言で指を抜いた。

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