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11.求めたその先(1)
「……し、んじられない」
目を覚ましてしばらくたってからも、ジークは宛がわれた部屋のベッドに横たわったまま、両手で顔を覆って呼気を震わせていた。
その顔は、耳と言わず首まで赤い。
いまだ身体の奥に蟠ったままのそれ は、確かにジークの何もかもを鎮めてくれた。
自分の意志とは反した衝動もそうだし、ずっともやが掛かったようだった頭の中もすっかりクリアになっている。どこに触れても過敏に粟立つようだった肌の感覚も、ちゃんと平素の――どちらかと言えば鈍感な――それに戻っていた。
今回は記憶もちゃんと残っている。残っているどころか、薬のせいか妙に鮮明にこびりついていた。少しでもそのことを思い出そうとすれば、すぐにでもその光景が蘇ってくる。最中に囁かれたアンリの言葉も、その声も――ともすれば、その時の感覚も。
「あんな……あんなこと――」
忘れたいと思うのに、ジークは何度もそれを再生してしまう。
ジークだって成人男子だ。性欲は人並みにある。
けれども、それはあくまでも人並みで、もっと言えば突っ込む方で、まさか自分がそんな自体に陥るなんて考えたこともなかった。
とは言え、実際〝出す〟だけではまるで解消には至らなくて――。
どうしたら……と訊ねたジークに、アンリはふっと表情を和らげた。
その瞬間、アンリに対する印象が変わった。基本無表情か、どちらかと言えば冷淡に見えていた男が、不意打ちのように微笑んだのだ。「大丈夫」と優しく言われた気がして、ジークもそれを境に少しだけ意識を改めた。気を許してしまった。結果、あくまでも治療との認識の上、身を委ねてしまったのだ。
それが間違いだった。
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