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♥11.求めたその先(6)

「あ、アンリさ……待、っ――!」  それなりの準備と、血の作用のおかげだろうか。幸いにも痛みはほとんどなかったが、それでも慣れない圧迫感と違和感は消えることなく、ジークの思考を苛んでくる。頭では苦しいと感じているのだ。  なのに身体がそれを享受する。それが()いのだと勝手に書き換えようとする。  ――怖い。 「いや、だっ……放し……っ、あぁっ、あ……っ」    ジークは拒絶を示して頭を振った。  何とかカウチの上を這い上ろうとしながら、胎内(なか)を貫くそれから逃げようともがく。その刺激だけで達してしまいそうになるのを、辛うじて堪えながら――。 「どこに行くつもりだ」  その後頭部にアンリが手を伸ばす。そんな言葉と仕草に、ジークは思わずびくりと全身を強張らせた。  それを宥めるようにアンリの指先が頭を撫でて、髪を梳く。  けれども、次の瞬間、 「――んぅ!」  不意打ちのように顔を強くクッションに押さえつけられ、息が詰まった。 「お前が言ったんだろう。満足させてほしいと」  背中に胸板を重ねるようにしながら、耳の後ろで囁かれる。体勢に必然と繫がりが深くなり、ひく、と引き絞られたみたいに喉が鳴った。  アンリの手が後頭部からうなじへ流れる。その隙に、酸素を求めてどうにか顔を横向けた。 「はっ……ふ、あぁっ、も、やめ……っ」  アンリのもう一方の手が、ジークの腰を掴んで固定する。ジークの声など当然のように聞き流されて――どころか、身体をずり上がらないよういっそう取り押さえられ、より深いところまで一気に突き上げられた。

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