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♥【閑話】お菓子をあげるから/ラファ×ギル(5)
「う………っちょ、なんか」
「なんか……?」
彼が戸惑いもあらわに言葉を濁す。その顔はばつが悪いように赤く染まっている。
そんな反応を見ているだけで、僕のそれは痛いくらいに嵩を増す。
「こんな身体で……よく人のこと抱かせろとか言いますね」
囁きながら、僕は彼の耳朶に歯を立てた。
「い……っ! ちが……っいつもは、こんな」
「いつもは……こんなじゃないって?」
しらじらしく問い返すと、彼はこくこくと頷いた。その仕草に唇から耳朶が外れ、それを追うようにして今度は唇で食む。ちゅる、と音を立てて吸い付くと、ぴくりと彼の肩が揺れた。
……彼の言いたいことはよく分かる。だって実際その通りなんだろうから。
彼の過剰とも言える反応は、きっとアンリの薬のせいだ。
(ていうか、何でそれを疑わないんだろう)
僕ならまっさきに思いますけどね。あ、何か盛られたなって。
何だかんだ言いながら、少しは僕のことを信用してくれているんだろうか。それとも、単に考えが及ばないだけ?
……きっと後者ですよね。
「っもう、いい加減に……」
耳元から首筋へと舌を這わせれば、逃げたいように顔を背けられる。
改めて「外せ」とばかりに腕を動かされると、手首を戒めているロープが軋む音を響かせた。
「冗談だとでも思ってるんですか?」
ゆるりと頭をもたげて、その顔を笑顔で見下ろすと、熱を浮かせて潤んだ瞳が、僕を睨み返してきた。
……ああ、逆効果。
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