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12.自覚と認識(2)
「あぁ、もう起きてたんですね」
声をかけられるのと同時に顔を上げると、そこに立っていたのはリュシーだった。
リュシーの手には、昨日の朝と同じようにガラスの水差しが握られていた。注ぎ口には小ぶりのグラスが被せてあり、腕には濡れた手巾がかけられている。
「あ、あの……」
「はい?」
目が合うと、ジークはたちまち着火したみたいに顔を赤くした。何と説明すればいいのか分からず、ただ口を小さく開閉させるジークに、リュシーは顔色一つ変えることなく、淡々と言った。
「すみません、昨夜は身体を拭くしかできなかったので」
(…………?)
リュシーは立ち尽くすジークの横を通り過ぎると、ベッド脇のサイドテーブルの上へと持っていたものを置いた。
そして当たり前のように、足元に落ちていたジークの部屋着を拾い上げ、ベッドの上でそれを畳む。
ジークは前も後ろも押さえた格好のまま、半ば呆然とリュシーを見つめた。
(今、身体を拭くしか………って言った? 拭くしかって何……?)
しかも、〝昨夜は〟って?
遅れて反芻した言葉に、血の気が引くような心地になる。
「あ、あの……っ」
それを振り払いたいようにも一歩踏み出すと、途端に後ろが潤んでくる感触がして、ジークは慌てて内腿に力を入れた。
リュシーが顔を上げ、小さく息をつく。
「……やりましょうか? それとも、自分でします?」
「……自、分でする……って、何を……?」
「水浴びはいつでもできますよ。裏の小川で」
「あ、あぁ……水浴び……」
知らず強張っていた身体から僅かに力が抜ける。けれどもそれと束の間で、
「もう、必要なものは吸収しているそうですから。残りは出しておいた方がいいようですよ。特異体質でも」
「……え? な……え…………?」
「出しておいた方がいいようですよ」
戸惑うばかりのジークに、リュシーは同じセリフを平板に繰り返す。
「だ、だ……す?」
ジークがどうにかそれを復唱すると、それに応えるみたいに後ろからこぽりと雫が溢れた。
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