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♥14.契約魔法のせいで(8)

「や――あぁあっ……!」  悲鳴じみた嬌声が辺りへと響いて、開かれたままのリュシーの唇がはくはくと開閉する。  深く貫いたままのロイのそれを、うごめく襞が引き絞るように締め付ける。  危うく立っていられないほど下肢がわななき、背筋が小刻みに震えてしまう。口端からこぼれた唾液が、首筋へと伝い落ちていく。 「ぁ……あ……、っ……」  うわごとめいた声が漏れる。頭の芯がびりびりと痺れているようだ。ロイに掴まれたままの腕にもまるで力が入らず、今にも意識が飛んでしまいそうだった。   「は……ほんと、えろいな、お前……」  やはりリュシーが吐精することはなかった。  それでもちゃんと達したらしいのが分かって、ロイは楽しそうに隻眼を眇めた。舌なめずりするみたいに唇を舐めながら、弛緩したリュシーの腕から手を放す。  ……やっと終わったのだろうか。  ロイが出した感覚はなかったけれど、それでも満足してくれたなら幸いだ。  リュシーは霞む思考の片隅で、密やかにほっとする。  ――けれども、ロイはその細い身体を再び後ろから抱き締めると、今度は一方の手のひらでリュシーの下腹部を押さえつけてきた。そうしながら、またしても腰を密着させてくるのだ。 「ちょ、待……っ俺、い、|達《い》ったばっかだし……もう……っ」 「知ってるよ」 「ぃ……っあ、それに、ぁ、なに……苦し……っ」  リュシーの言葉も半ばに、ロイは接合部を擦りつけるようにして、根元の|際《きわ》までしっかりとくわえ込ませてくる。するとまた一段と苦しさが増した気がして、リュシーは堪えるように奥歯を噛み締めた。 「あぁ……根元? 俺ももう、|達《い》きそうだからな」  根元? |達《い》きそうだから?  リュシーには意味がわからない。 「アンリにはなかっただろうけど……|狼《俺》にはあるんだよ」 「は……? ぁ、なに、が……っ」 「何って……」  ふ、とロイは息をつき、「これだよ」と誇示するみたいに腰を押し付けてくる。  言われてみれば確かに根元が太い。太いというか……丸い? 何か|瘤《こぶ》状の膨らみがある気がする。 「これがあるから、俺は出したらしばらくは抜けない」 「は……?! 何だよ、それ……っ。んなの、聞いてな……っ」 「まぁ、わざわざ言うほどのことでもねぇかなって」  自分からすれば当たり前のことだし。と、ロイは笑うような呼気を漏らした。  いや、それは言えよ……!  リュシーが思うのも当然だ。  そもそも出したらしばらく抜けないって何だよ! 冗談じゃない! 「まぁ、そんな何時間もかかるわけじゃねぇから、大丈夫だよ」 「だから、あんたの大丈夫はっ……」  当てにならない、と続く言葉を、首筋を食まれることで阻まれた。 「いいから、お前ももう一回くらい|達《い》こうぜ……?」  いこうぜって……そんな散歩にでもいくみたいに!  いろんな意味で唖然とするリュシーの素肌に、ロイの犬歯が触れる。髪に鼻先を埋めるようにして、生え際に舌を這わされ、何度も|項《うなじ》を甘噛みされた。 「ぃ……っあ、もう、無理……っ」 「無理じゃねぇ、って……」  ロイの手に指をかけても何の意味もなさない。  構わずロイの手は服の上から胸元をまさぐってくる。その一方で、|胎内《なか》から穿たれ、外からも腹部を圧迫される。 「や……っそれ、やだっ……や、あ!」  間に位置する中のしこりが挟まれ、押し潰されるのが分かる。たちまち身体の奥に熱が灯り、透明な雫に濡れたリュシーの屹立が、ふるりと震えて勃ち上がった。――出せないのに。 「は、リュシー……っ」  名前を呼ぶ声が、吐息と共に肌を掠める。  リュシーを求める動きが早急になり、肌のぶつかる音がひときわ高くなった。 「あぁっ、ぁ、っ――!!」  一拍後、リュシーが再び上り詰めたのと同時に、身体の奥の奥へと熱い|飛沫《ひまつ》が注ぎ込まれた。それが逆流しなかったのは、やはりロイのその〝特性〟あってのことなのだろう。  事実、ロイのそれは大きさや形だけでなく、吐き出したその量も半端なかった。

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