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15.霧の中で(14)

 *  *  ジークはぐるぐると目が回るのを感じていた。  ギルベルトに触れられると熱が増し、ラファエルに近づかれると少し落ち着く。  そのたびにフェロモンの香りが濃くなったり薄くなったりする。  ギルベルトに引き上げられそうになればリン! と大きく鈴が鳴り、その手をラファエルが外してくれれば、へなへなと地面へとへたり込み、リリン……と不安げに鈴の音が揺れる。  それでも食い下がるようにギルベルトはジークを地面に押し倒し、ラファエルには「てめぇは黙ってカヤんとこでも行っとけよ!」と一方的に吐き捨てた。  そうしながら、ジークの身体を覆っていたマントを力任せに左右に開く。すると一気にジークの匂いが舞い上がり――けれども、 「――懲りない人ですね」 「あだだだだだ!!」  次の瞬間、ラファエルはギルベルトの尖った耳を思いきり引っ張り――それこそピアスごと引きちぎらんばかりに――思わず身体を反らせたギルベルトを、そのまま手際よく地面へと転がしてしまった。 「……!」  背中を打ち付けたギルベルトが息を詰まらせる。その横で、身体を起こしたジークはびくりと身を竦ませた。 「だいたい、前も言いましたけど……」  ラファエルはあくまでも表面上は笑顔だった。  けれども、どう見ても怒っている。それが分かるからよけいに恐ろしく感じてしまう。 「その品のないピアスは外せって言ったでしょう」 「だから何でだよ。こっちこそ前にも言ったけどどんなのつけようが俺の勝手だろ!」 「……僕が気に入らないからですよ」 「はぁ?!」 「そんな、どこの馬の骨とも知れない相手からもらったもの……」 「いやお前何言ってんの? 俺様が自分のガールフレンドからもらった物をどうしようが|お前《てめぇ》には関係ねぇだろがっ」

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