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15.霧の中で(15)

「……そうですか」  ラファエルはギルベルトを冷ややかに見下ろすと、何の前ぶれもなくその身を組み敷き、服の前を左右に開いた。開いたというか……破った。 「ぎゃ――おまっ!! 何っ……何してんだよ! このクソボケ!! ばか力!! これ、この革……っ俺がどんだけ気に入ってると――」 「…………」 「やっ……ええ!? 嘘だろ!!」  ギルベルトは声を荒げたが、ラファエルは何も答えない。どころか、口許だけでうっすらと笑ったまま、次には下に着ていたシャツもビリー! と小気味よい音を響かせ引き裂いた。 「ひっ……!」 「服くらい後でどうとでもしてあげます」 「いやっ……ちげーだろ! てめ……っマジ頭おかしいんじゃねぇの?!」 「ピアスだってそんなに付けたいなら僕が選んでさしあげますし……。何なら穴だって、耳以外の場所にも……」 「はぁ…………!?」  ギルベルトは一瞬閉口した。それからはっとしたように瞬いて、「いや、マジ求めてねぇから!!」と僅かに怯んだような声を響かせた。 (こ……れは……)  この状況は、た、助けるべきなのだろうか。  だけど、過日のことを考えると、この二人はもともとこういう関係というか……これで成り立っているようにも見えるような……。  だとしたら、手を出せば邪魔をするということに……。いや、でも……。  ジークは目の前の光景にどうしていいか分からず固まっていたが、 「あぁ、えっと……そうですね。少し離れていてもらっていいですか?」 「え……? あ、はい!」  不意にラファエルに微笑みかけられると、思わず素直に頷いてしまう。  そうして、何とか這うようにその場を離れようとするが、やっぱり……とためらいながらも再度彼らの方を見た。  するとラファエルが更ににっこりと笑みを深めて、 「大丈夫。合意の上ですから」 「合意じゃ――んぐっ」  反論しかけたギルベルトの口を、一瞥もなく即座に手で塞ぎながら言うのだ。 「行ってください。霧で見えなくなる程度でいいので。後は気になるようなら、耳を塞いでいてもらえれば」  柔らかくて温かい。そしてやはり神々しい。その微笑みはさながら天使のようで、見蕩れてしまいそうになったジークは、慌てて小瓶を強く握りしめ、すぐさま進行方向へと目を向けた。

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