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♥19.夢か現か(4)

 *  *  *  ジークはアトリエへと続く扉を開けた。  いつものように、窓際に佇む鳥かごへと目を向ける。  暗がりの中、微妙に焦点の合わない双眸に映るのは、籠の中で眠る一羽の青い鳥。  記憶に残らないその光景に、ジークは淡く微笑み、足元に落ちていた一枚の羽根を拾い上げると、壊れ物でも扱うようにポケットへとしまう。  その〝青い羽根集め〟も、ある意味恒例となっていたが、結局は知らないうちに着ているものを替えられているため、ジークの手元に残ったことはなかった。  ただリュシーがそれを見つけるたびに、「また入ってる……」と怪訝に呟いているだけで。 「……」  ひたひたと裸足で廊下を歩き、アンリの寝室のドアを開ける。  広いベッドの上にはナイトキャップを被ったアンリが静かに眠っている。 「アン、リ……」  枕元に見える、滑らかな朱銀の髪。  ジークは艶然とした笑みを浮かべ、確かめるようにその名を口にする。  躊躇うことなくベッドの上へと乗り上げ、彼の傍へと近づいていく。  手を伸ばし、上掛けに手をかけたところで、 「ぁっ……」  その手首をアンリが掴んだ。  かと思うとそのままシーツの上へと引き倒されて、仰向けにされたジークは僅かに視線を彷徨わせる。視界が陰り、するりと長い髪が降ってきた。と同時に目に入ったのは、まっすぐに自分を見下ろしてくる冷ややかな眼差しだった。  ジークの背筋がぞくりと粟立つ。  けれども、その顔から笑みが消えることはない。 「あ、はや、く……」  どころか、いっそう欲しいみたいに甘やかな声を漏らしてしまう。  下腹部は既に張り詰めており、溢れた雫が下着を濡らしているのが、肌蹴た合わせの隙間から窺える。  腰が艶めかしく揺らめいて、強請るみたいに唇が開く。そこから覗いた舌先が、ゆっくりと誘うように動いてアンリを急かす。 「ぁ……あ……」  今夜は戒められることもなく、すぐに自由にされた両手がアンリへと伸ばされる。その指がアンリの頬に触れ、耳元へと差し込まれるのに合わせて、ナイトキャップが傍らへと滑り落ちた。  頭を掴むようにして、引き寄せようと力をこめながら、あられもなく舌を差し出し、キスをせがむ。 「……ん、……ほし、……」  僅かな逡巡の末、アンリは応えるように唇を重ねた。  絡めた舌を擦り合わせ、迷いもなく入り込んでくるそれを甘噛みしては吸い上げる。 「んっ……ん、んん……っ」  ジークは嬉しそうに瞳を細めた。  舌の根に溜まる唾液を攪拌され、上顎をひっかかれると、たちまち腰の奥に熱が集まってくる。  肌がますます赤みを帯びて、控えめだった甘い香りがたちまち濃くなっていく。とろんとしたジークの瞳が、浸るように伏せられる。こぼれた唾液が口端から伝い落ち、それが線を描く感触にすら身体が震えた。 「欲ひ……、欲し……」  口付けながらも、ジークはうわごとのように繰り返す。  一方で押し付けるように下腹部が動くその様に、アンリは唇を離し、低く囁いた。 「欲しいなら足を開け」  その言葉に、ジークはそっと目を開け、上気した目端を笑うように綻ばせながら、言われるままに自ら下肢を左右に割った。  もう出すだけでは足りないということを、身体が完全に覚えていた。  何なら口から飲む方がまだ満たされる気がするとさえ感じ始めていた。  ……少なくとも、現状の――酩酊した状態のジークは素直にそれを感受している。 「誰が出していいと言った」 「あ、あぁ……っ」  口付けの間に一度達してしまったらしいジークの下着はどろどろだった。その上をアンリの指が強めに撫で下ろす。

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