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♥19.夢か現か(5)
「あぁ……っや、……んんっ」
達したばかりで過敏になっている身体が、逃げたいようにたじろぐ。
そのくせ、
「私の言うことが聞けないのか」
「やっ……あ、待……っ」
ならばとアンリが僅かに身を退 くような素振りを見せれば、恐慌したようにアンリへと手を伸ばしてしまう。
「次は、我慢、する……するから、これっ……」
その手はまっすぐアンリの下腹部へと下りていく。慣れた手つきでアンリの服を肌蹴させ、取り出したそれに指を絡める。両手を使い、絶妙な力加減で包み込み、先端から滲み出るものを指の腹で塗り広げるようにしながら、その位置を緩やかに上下させる。
「……っこれ、早く……」
この二ヶ月の間に覚えたやり方で、ジークなりにアンリを煽る。
そうしていると、ジークの方もますます身体の奥が疼いてくる。
……その熱が早く欲しい。
|胎内《なか》が寂しい。
勝手に揺らめく腰が止まらない。
ジークは堪えかねたように、アンリのそれを引き寄せるようにしながら、自らも身体を寄せ、そのまま自身の間 へと導こうとしてしまう。
「勝手なことをするな」
そんな仕草に、アンリは突き放すように言ってその肩を押した。
ジークはよろめき、その背が再びシーツに沈む。痛いくらいに張り詰めている屹立が、それを覆う布地に更にはしたない染みを増やしていた。
「これで我慢しているつもりか」
「ひ、あっ……!」
知らしめるようにアンリがそこを押さえつける。ジークの腰がびくりと跳ねる。それだけでまたとろりと蜜があふれた。
達するには至らなかったが、代わりのように、堪えようと閉じた目の際から涙がこぼれ落ちた。
アンリは手の位置をずらし、鼠径部を辿るようにして指先を下着の中へと潜り込ませた。裾側から布をめくり上げ、あらわにさせた谷あいはすでにしとどに濡れており、色づいた窪みが焦れたようにひくついていた。
「――いいな。達 くなよ」
アンリはそのまま自身の先端をそこに宛がった。
今夜はまだ指一本入れていないそこは、特性 はあれどそのままでは確実に狭い。艶めかしく収縮してはいるものの、綻びきってはいないのだ。
「ぁ、あっ……」
それでもジークの身体は、やっと待ち侘びたものが貰えるのだと歓喜する。気持ちが逸って、自ら迎えに行くようにもますます下肢を開き、腰を浮かせてしまう。
「ぃ、ん……っ、ぁ……!」
アンリの形に沿って入口が開 いていく。つられるように、唇も戦慄く。笑うみたいに、緩やかに弧を描く。
……けれども、数拍遅れで頭に届いた〝達くなよ〟という言葉が、一瞬、その思考をぶれさせる。
守れるだろうか。守れなかったら本当に欲しいものはもらえないのではないだろうか。
……だがそれも後の祭りだ。
「ぃ――っあぁあ……!!」
アンリはジークの下肢を大きく抱え上げ、次にはその充溢を一気に最奥へと捻じ込んだ。
「ぁ、いっ――ぃあ、あ……!」
狭い|内側《なか》を強引に割られて、ジークは引き攣ったような声を上げる。
ヒート中であることもあって、身体の順応性は高い。とはいえ、圧迫感や違和感がなくなるわけではないし、今回ばかりは痛みもあった。
堪えるように奥歯を噛み締めてしまう。それでも、不意に緩む口から漏れる吐息は甘い。
隘路を擦られるたび、芳醇な香りが強くなり、包み込むような浮遊感に頭の芯までとろけそうになっていく。
腰に蟠っていた紐はいつのまにか完全に解 け、さらされた胸元は触れられてもいないのに小さな色づきをツンと隆起させていた。
「ん、ぅ、あぁっ、ぃ……っ」
いっそう身体を折るようにされると、勝手に接合部が上を向く。ほとんど垂直に突き込んでくる動きに合わせ、ぐちゅ、ぐちゅりと淫猥な音が部屋に響いた。
反り返った自身の先端が布の下で擦れている。次第に先端が上から覗いて、戯れのように胸の先を爪で弾かれると、呼応するみたいに白濁が僅かに飛び散った。
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