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♥19.夢か現か(6)

 アンリが無言で目を細める。その眼差しを茫洋と受け止め、ジークはふるふると頭を振った。 「い、今のは……っ」  少なくとも、完全には達っていないと訴える。  下腹部を半端に戒めるような下着に助けられたのだ。もどかしく邪魔だと思っていたそれがなければ、簡単に達していたかもしれない。 「そうか」 「ゃ、待……っ!」  するとそれを読んだかのように、アンリは試すみたいに最奥を穿った。敏感な内壁を一気にめくりあげ、行き止まればその場所を執拗に躙る。 「あぁっ、だめ、も、い……っ」  ジークの声が甘く掠れる。シーツを掴む手にいっそう力が入り、目の前が白く瞬いた。  かと思うとぱたぱたとジーク(自分)の顔に雫が降ってくる。遅れて伝い落ちてきたそれが、唇を濡らす。下着から覗いていた先端が、いつのまにか更に露出していた。 「ぁ……あ……」  そんなあられもない格好のまま、ジークは浸るように目を閉じる。余韻に小さく震えながら、弛緩する身体を心地良い気怠さが包み込んでいた。  けれどもそれも束の間で、幾度か緩慢に瞬くうちには、すぐさま身体の奥が疼いてきて、 「あ、ち、違……っ」  同時にジークははっとしたように声を上げた。 「何が違う」  責めるように言われて、言いつけを破る(そんなつもり)はなかったと首を振る。  なのにそうしている間にも、内壁は戯れるようにアンリを締め付け、|強請《ねだ》るようにきゅんきゅんと収斂するのだ。だってまだ本当に欲しいものは貰えていないから――。  アンリは呆れたように目を眇めた。 「や……ぁ、やめな、で……っ」  ジークが縋り付くような声を漏らす。  アンリは何も応えず、ただ身体を繋げたまま、サイドテーブルの上にある小瓶に手を伸ばした。 「んんっ……!」  たったそれだけの動きにも、ジークの屹立から蜜がこぼれる。まるで先刻の残滓が押し出されるように。 「口を開けろ」 「ぁ、え……?」  ジークが戸惑いの色を浮かべるのも構わず、アンリは指先でジークの口を割った。  その隙間から、中の液体を一気に注ぎ込む。 「……んんっ……! ……っ、ぅ、けほっ……」  ジークは咳き込みながらもされるがままにこくんこくんと喉を鳴らした。  味的にはさらっとして飲みやすかった。ほのかにフローラルな香りがするのは花の蜜と薔薇が使われているからだろうか。  瓶の中身が一滴残らずなくなったのを見届けてから、アンリは傍らに空瓶(それ)を転がし、改めてジークの身体を押さえつけた。 「……もう一度言え」 「え……っ、あ……?」 「お前の望みはなんだ」  囁くように問いながら、見せつけるようにゆっくりと腰を引く。同様に奥へと戻し、かと思うとすっかり膨らんで主張するしこりを胎内(なか)から不意に押し上げる。 「あ、ぃっ……あぁっ!」  ジークは弾かれたように喉を反らした。

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